「…すんげー田舎だな。ホントにこんなとこにいんのか?そのティアーユ博士っての」
現在私達はティアーユ博士がいるところへ向かっている。街は賑わっていなくて静か。そもそも人があまり歩いていない。トレインさんの問いにスヴェンさんが地図を見ながら答える。ティアーユさんはこの先にあるバジル湖というほとりに住んでいるみたい。リンスさんが調べた情報によるらしいけど。
「…ところでトレインよ」
「何だ?」
「"例の女子高生"からあれから何か連絡あったか?」
女子高生…キョーコさんの事かな。トレインさんはキョーコさんから昨日電話がかかってきたらしく、三時間ぐらい意味のない話をしていたらしい。しかも夜中に。た…大変だなぁ…。多分その三時間もキョーコさんが一方的に話をしていたのを安易に想像できる。
「でもあいつセフィリアには予定[スケジュール]の都合でまだ会ってねぇってよ。今日ヘリで待ち合わせの場所へ向かうらしい」
「…!」
「今日…」
何事もなければいいんだけど。なんだか心配…。
第22話 新しい銃
「出てこねーな…」
バジル湖に着いた。綺麗な湖を眺めていれば、やがて一軒の家を見つけ車を止める。トレインさんがインターホンを鳴らす。だけど何度鳴らしても人が出てくる気配はしない。
「ホントにここがティアーユ博士の家なの?」
「住所は確かにここのはずなんだがな…」
「留守なのかな?」
人が住んでいる気配すらしないからか、扉に触れるトレインさん。すると扉が開く。どうやら鍵はかかっていないみたいでそのまま中に入ろうと言いはじめる彼に私は焦った。流石にそれはマズいと思ったから。
「待ってトレインさん。…あ」
「…明」
「ご、ごめんね…」
少し開けている扉を閉めるためにドアノブに触れようとした結果、そのままトレインさんの手の上に自身の手を重ねてしまった。それだけでもドキンと心臓がはねてしまう。直ぐにどけたがトレインさんは私の名を呼ぶだけ。何を言えばいいのかわからず、目を逸らす。…どうしてこんなにもトレインさんと話しかけづらくなったんだろう…。
「…ん?」
気を取り直してトレインが扉を完全に開く。すると中から何か煙のようなものが出てくる。それはとてつもなく臭い。トレインさんがすかさず鼻をおさえる。スヴェンさんが言ったドブ川の臭いにそっくりだ。イヴちゃんの方を見ると、流石に臭いのか無言で鼻をおさえていた。…私もなんだけどね。
「毒ガス!?ま…まさか何かの実験に失敗して…!?いかん、もしそーなら助けねーと!」
そう思ったスヴェンさんが中に入ろうとした時、中から人影が見えた。金髪の長髪の女性。その人を見て直ぐにわかった。
「料理してるんですけど…」
写真で見た―――ティアーユ博士だと。
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