「スヴェン…肩の怪我は大丈夫なの?」
あれから数日経った。修理に出していた車が戻ってきた為、車に乗ってアジトに戻っている。運転するのはスヴェンさん。イヴちゃんが心配そうな表情でスヴェンさんに訊いていた。
「ああ。まだちっと痛むが…今のトレインに運転させるわけにもいかねーしな」
クリードにやられた傷が完治してないままバルドルさん達と闘ったのだから、治るものも治ってないはずだ。だけどスヴェンさんがそう言うのは当たり前だった。トレインさんも運転出来るけど…今の子供の姿のトレインさんが運転したらどうなる事やら。考えただけでも恐ろしい。
「ご要望とあらばいつでも運転代わるぜ?」
「えっ!?」
「いや駄目だろそのカッコじゃ!」
流石にビックリした…。楽しそうな声で言うんだもん。…それにトレインさんなら本気でやりかねないというか。
「…イヴ。アジトに戻って少し休んだら俺達はアネットの店に行く。トレインを元に戻す方法を調べねぇといけねぇからな」
だからアジトで待っていてくれないかと頼むスヴェンさん。イヴちゃんは「うん」と答える。情報を知る為にアネットさんを尋ねるのはわかる。でも何でイヴちゃんは一緒に連れていかないのだろう。そこだけが疑問に残った。
第21話 それぞれの気持ち
アジトに着き少しだけ休憩をした私はイヴちゃんに行ってくるねと声をかけて部屋から出る。ちょうどアジトの出入口からスヴェンさんが出ていくのが見えて慌てて追いかけた。スヴェンさんは車の運転席に座ってるが、助手席は誰も座っていない。私が不思議に思っていると、助手席の窓が開く。
「トレインならやりたい事があるから残るらしいぞ」
「あ、そうなんだ」
「明はどうする?」
「スヴェンさんと一緒に行くよ」
助手席の扉を開けて座り窓を閉める。シートベルトをきちんとすれば、スヴェンさんが意外だなと呟くからそちらに顔を向ければ言葉通り少し驚いた表情で私を見ていた。
「てっきりトレインと一緒にいると言うと思っていたぞ」
「なっ、何でトレインさんなの?もう、行こう!?」
ここで何故彼の名前が出るのか。顔が熱くなるのを感じながら窓の外の景色を見る。
「…鈍いもんだな…」
エンジンをかけながら呟いたスヴェンさんの言葉は私には聞こえていなかった。
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