一方トレインは部屋にいるイヴに声をかけようと中に入っていく。本を読んでいた視線をトレインの方へ向けるイヴ。アネットの所へ全員で行くと思っていた彼女は少しだけ驚いていた。


「トレイン…スヴェン達と一緒に行かなかったの?」

「おう。街に着いたらちっとやりたかった事があったんでな」

「…ふーん。明と一緒にいないなんて珍しい」

「そ、そんな毎回一緒にはいねぇだろ」


イヴの言葉にトレインは頬を掻きながら答える。イヴから見てトレインが明と一緒に行動しないのは意外だった。否定しなくていいのにと言いかけた口を閉ざし、別の質問をする。


「それで、やりたかった事って?」

「…子供料金で!映画を観る!」

「…ほう、映画!」

「おう!やっぱ一度はそーゆー事やってみねーとなっ!」


本来ならトレインが子供料金で映画を観る事なんて出来ない。が、今のトレインは子供の姿だから出来る。イヴを誘い外に出て街の中にある映画館に歩いて向かった。


「へへー!映画館なんて一年ぶり位だぜ。今どんなのやってんだろうなー」

「初めての映画がトレインと一緒か…」


少し嫌そうな顔をしながら呟いたイヴにトレインは驚きながらも「嫌なら来んなよー」と言うが、やはり映画というのが気になるのか一緒に向かうイヴ。流石、というべきか人がいるせいかどれも満員で観れない。だがイヴが空いてると指をさした映画は『父さんと犬』という映画だった。


(ま…全く!惹かれねぇ!)

「…おもしろそうだね」


二人の考えは真逆だった。イヴがこれを観たいと言い出し、どれも空いてない為結局トレインは嫌々ながらも観る事にしたのだった。










「…なるほど…。そのティアーユって科学者がトレインを元の姿に戻せる唯一の可能性って訳だね」


一方私達はアネットさんの所に行って話をしていた。トレインさんを元の姿に戻せる人の話を。その人の名はティアーユ博士。イヴちゃんを誕生させた人、トルネオという人がナノマシン研究の為に世界中から集めた科学者チームのそのリーダーをつとめていた女性、それがティアーユさん。つまり…イヴちゃんの生みの親。


「…で、その女に関する情報を私に調べて欲しいのかい?」

「いや…実はもう居場所も顔もわかってんだ」


そう言いながらスヴェンさんが出したのは一枚の写真。それをアネットさんと一緒に見る。…ホントに、イヴちゃんにそっくり…。


「その顔を見て俺は…。ますますイヴをその女に会わせたくねぇ…って思った…!」

「スヴェンさん…」

「…トレインには…この事話したのかい?」


全部話したみたいだ。イヴちゃんには伏せてと念を押して。それを聞いてアネットさんがイヴちゃんには何も言わないのかと尋ねる。


「ああ。実は…イヴを少しの間あんたに預けて三人だけでティアーユに会いに行こうかと考えてる」

「!」


三人。つまりイヴちゃんを除いて私とトレインさんとスヴェンさんって事?でも、それは…。


「なるほど…それで私の所に…。全く!またそういう考えなのかい!」

「!」


ダンッとアネットさんがテーブルをおもいっきり叩いた。それにスヴェンさんも周りのお客さんも当然ながら驚く。


「…どうやらトレインの方があの娘の気持ちをよくわかってそうだね…!」

「あのね、スヴェンさん。…やっぱりイヴちゃんに何も言わないで行くのは良くないと思う。話をした上で行くか行かないかはイヴちゃんが決める事だよ。私達が決める事じゃない。だから…ちゃんとイヴちゃんに言おう?」


多分…トレインさんは伏せてって言われてもイヴちゃんに言ってくれてると思うから。スヴェンさんは「…わかった」と頷いたのだった。
 
 
 
 
 


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