「…で、いつ頃の話なんだい?あいつに会ったってのはよ」

「ああ。あれは確か二年と少し前…。私がこの街を当時仕切っていたギャング団の手下をしていた頃だ。あの日…私はちょっとしたミスをしてね…」


ミスをしたことで同じギャング団の人達に殴られていた所をサヤさんが助けてくれたらしい。


『大丈夫?ありゃりゃ、顔面ボコボコっすねぇ。待って、今手当てしたげるから』

『…くっ』


そんな事言われてもやはり信じられないみたいでベヤードさんは刃物を取り出しサヤさんに向けたらしい。だけどサヤさんは笑い。


『ケガしたら誰だって手当てするもんだぜっ』


と言ったという。そして裏世界から足を洗う事と深入りしてもロクな事ないと注意してくれたみたいだ。優しい人だな…。


(あいつらしいな…)


隣にいるトレインさんは笑っていた。私もべヤードさんに出された飲み物を飲みながら聞いているが、サヤさんの話に心が温まる。
その後ベヤードさんはサヤさんに手当てをされて色んな話を聞いたみたい。そこにトレインさんの話も出てきたらしい。だから名前を聞いた時反応したのだろう。


「しかし…思いもしなかったよ。まさか…こうして出会う事になるとは。それも…こんな形で…」


ベヤードさんの表情が曇り、どうしたのだろうと思っていれば突然扉が開く。数人の人が入ってきては私達を囲み銃を向けてきた。


「えっ…!?」

「…おやおや、いきなり入ってきてずいぶんと失礼な連中だね。これがあんた流のもてなしなのかい?ベヤードさんよ」

「ベヤードさん…。この人達は…」

「…すまんねぇトレイン君…明さん…」


先程優しい表情で話していたのが嘘の様に、妖しく笑うベヤードさんは別人のようだった。もしかして最初からトレインさんを狙って…!?
後からサングラスをかけた男性が一人入ってくる。私達に銃を向けている人達の上の人だろうか。


「…そいつか?ベヤード」

「ええ。ちゃんとあなたが来るまで足止めをしておきましたよロイフェンさん」

「…よくやったぜ。どうやら以前お前が話してた黒猫の知り合いって女の話は本当だったみてぇだな」

「あなたに嘘なんてつきませんよ。まあ一人おまけがついてきましたが…」


おまけ、とは私の事だろう。それよりもこの状況…どうしたらいいんだろう。そう思ってトレインさんを見るとトレインさんは「あらあら…」と笑っているだけだった。


「フフフ…初めまして黒猫…。聞く所によると掃除屋をやってるらしいじゃねぇか」


ベヤードさんと話しているロイフェンと呼ばれた男性が私達の目の前に立つ。
 
 
 
 
 


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