『あなたは…明さん、ですよね?』

『え、あ、はい!』

『ふふっ、そんな緊張しなくてもいいですよ』


そうは言われてもこんな綺麗な大人の女性に緊張するなという方が無理だと思う。なんて余計な事を考えていたらこちらを見ていたセフィリアさんの目が変わった。


『…あなたは空から降ってきたと』

『!』

『そうベルゼーから聞きました』


聞いた話によるとたまたまベルゼーさんが上を見ていたら私が空から降ってきたのが見えていたらしい。しかもどうやら途中まで私の体は光っていたらしく。…多分シズクさんの力だと思うけど…。


『…どこから来たのですか?答えられない場合は…』

『殺すってか?』


セフィリアさんが言い終わる前にトレインさんが先に言った。殺す、という言葉に息を飲み込む。


『…ええ、そうです。どこから来たのかもわからない人間をそのまま放置にしておくわけにはいきませんから』


そう言ってセフィリアさんは私を睨んだ。その目が怖くて…泣きそうになる。我ながら情けない。


『わ、私は…』

『悪いが明は殺させねぇよ』

『!』

『当然だな』

『うん。明は仲間だもん』


皆がそう言ってくれて、イヴちゃんが私の手を握ってくれる。そんな皆の言葉一つ一つが嬉しくて…涙が出てくる。


『…なるほど。余程彼女の事を大事に思っているのですね』

『そういう事だ。…それに俺は明の事を守るって決めてんだよ。だからこいつは俺が守る』


トレインさんの"守る"という言葉。心強くて、やっぱりこの人は優しいと改めて思った。私は涙を拭いてしっかりとセフィリアさんの目を見た。


『…ごめんなさいセフィリアさん。答えられません。これは言えない事なんです』

『…では殺されてもいいと?』

『いいえ。私には探さないといけない事があります。それを見つけるまでは死ねません。…絶対に』


これはこの世界に来させてくれたシズクさんとの約束だから。破るわけにはいかない。それにまだまだ私はトレインさん達とも一緒にいたいから。セフィリアさんがどれだけ強くてもこれだけは譲れない。
しばらく沈黙が流れる。私とセフィリアさんは見つめあったまま。口を開いたのは。


『…いい目をしていますね』

『え?』


セフィリアさんだった。セフィリアさんはフッと笑いベルゼーさんに『戻りましょう』と言う。ベルゼーさんは『いいのか』と聞く。私は戻るという言葉にびっくりしていて言葉が出ない。そんな私をセフィリアさんは見て。


『…ええ。しばらく様子を見ましょう。もし何か怪しい事をしたらその時は…』


あえて言わないでセフィリアさんは出ていった。それを確認すると私は肩の力が抜けてしまい、息をはいた。


『…とりあえずは何とかなったか』

『ああ。…よく頑張ったな。セフィリアにあそこまで言えるの中々いねぇぞ?』

『で、でも怖かったよ…』

『…だけど伝わったよ。明の気持ち』


イヴちゃんが笑ってくれて、私はずっと握ってくれていたイヴちゃんの手をぎゅと握り返す。きっと皆が傍にいてくれたから言えたのだと思う。


『ありがとう…。本当に皆ありがとう。皆がいるから、私…』

『バーカ。何泣きそうな顔してんだ』

『当然の事を言っただけだろう』

『…それが嬉しいよ…。あり、がとう…』


また涙が出てきてトレインさんが慌てる。だけどスヴェンさんが私にタオルを持ってきてくれてイヴちゃんが抱きしめてくれて。本当に、本当にこの人達が仲間で良かった。感謝しきれないほど感謝してる。…ありがとう。
 
 
 
 
 


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