「か、体が痛い…」


ユヅキさんとの修行が終わって部屋で寝転んでいた。眠たいなと思いながら先程の事を思い出す。結果は一撃も攻撃できなかった。
改めてユヅキさんに言われた事は…私は"人を斬ることにためらっている"。簡単に人を斬るなんて出来るわけがない。血を…見たくない。だからユヅキさんの血を見た時、自分の頬についた時…吐き気がした。元々私は血に敏感みたいで、ちょっとした血を見ただけでも寒気がする。自分の血は…あんまりなんだけどな…。


「!…はい!」


そこでコンコンと誰かが扉をノックしてきて一旦考えるのをやめ、体を起こす。私が扉を開ける前に入ってきたのは。


「ちょっといいか?」

「トレインさん…!?」


意外も意外。トレインさんだった。私は入ってきたトレインさんに近づき、「どうしたの?」と聞く。


「これ、お前のじゃないかと思って」

「あ…!外れてたんだ…」


トレインさんが渡してくれたのは猫のマークがあるブレスレット。どうやら廊下に落ちてたらしく、私がこれをつけていたと思い出して届けに来てくれたみたい。まさか外れていたなんて思っていなかった為、驚いた後「ありがとうトレインさん」とホッとしながら笑い受け取る。そして右手につけた。


「それ、誰から貰ったのか?」

「…お母さんとお父さんに」


何となく、トレインさんは私に訊きたい事があるんじゃないかと思い、ベッドに座る様に促す。私もその隣に座る。


「訊きたかったんだけどよ」

「うん。遠慮しなくていいよ」

「元の世界に戻りたいとか、思わないのか?」

「…正直言うとね。帰れるものなら帰りたいって思っているんだ」


こんな事言ってトレインさん達には本当に悪いと思う。でも…本当の事だから。それにもう既に態度に出ていたのかも知れない。だから彼は気になって訊いてきたのだと思う。


「司とかどうしているのかとか気になるし…」

「司?」

「私の親友。普段は優しいけど怒ったら…アニメみたいな鬼の顔になるの」

「どんな顔だよ」


ぷっと笑うトレインさんに「本当なんだよ!こうね、頭から角が生えてるの!いや、そういう生えてるぞっていうオーラがね…!」と必死に説明すると余計に笑うトレインさん。誰だってそういう顔になるだろって思うかも知れないけど司は違う。うん、とりあえず何か違う。


「でね、話をしたと思ったら彼氏の話ばっかりで。正直聞き飽きてたんだ」

「って言いながらも笑ってるぜ?」

「それは…司が幸せそうに話すから。そんな司を見て私も嬉しくなって…」


天田君の事を言う司は幸せだっていう顔をしていて。ちょっぴりヤキモチを妬いてたな。天田君も天田君で幸せな顔して司の事を話すから、何だこのバカップルってツッこんだりしてたし。


「懐かしいな…」


思い出す度に余計に会いたくなる。二人ともどうしているのかな。司は…私の事を忘れて天田君と幸せに過ごしているのだろうか。それとも。


「…司は最悪だと思ってるだろうな」

「最悪?」

「私、司の目の前で死んだの」

「!」


事故で死んだ、とは言ったものの親友の前で死んだとは言ってなかった為、トレインさんが驚いた表情をする。
 
 
 
 
 


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