「えーっ!!?ウドニーが"あの"黒猫ぉ!?」
「おおよ!この左腕のタトゥーが証だ!」
「すげー感動したぜっ!!」
「だろぉ!?ガハハハハ」
13というタトゥーをドヤ顔で本物のトレインさんに見せるウドニーさん。一方トレインさんはわざと本物に会えて嬉しいというように言っている。何でトレインさんのタトゥーに気づかないのだろう。はぁ、とため息をつくとイヴちゃんが心配そうに見てきたので「ごめんね」と謝った。
「…トレインの奴…。メシ奢ってくれるからって相手にあわせてやらなくても…」
「単にからかっているだけじゃないの?」
「トレインの刺青に気づかねぇあいつもあいつだな」
「スヴェンさん!私と一緒の考え!」
「やっぱ思うよな、普通は」
そりゃあ思うよ思う。話していたら目に入ると思うのだけど。わかりにくいところにあるんじゃないんだから…。
「…でも良かったね」
「ん?」
「お昼代が浮いて」
「うーむ…。おかげで話しそびれたけどな…」
「そう言われると何も言えないね」
「ああ…」
それからしばらく歩いていくとイヴちゃんが先程話していた"黒猫の名が持つ意味"とは何かとスヴェンさんに聞いた。私も気になる。
「ああ…つまりな…」
スヴェンさんが答えようとした…時にこちらに向かってくる足音。それに気づき私達は振り返る。
「止まりやがれっ!あんた…黒猫だな?」
三人組の一人がそう言うと少し反応するトレインさん。だが彼が言っている黒猫…とはウドニーさんの事だろう。それをわかっているのか…というかトレインさんの事を黒猫と知らないウドニーさんは当然ながら自分の事だと思い、自慢げに刺青を見せる。それを見て三人組は驚くが誰かの名前を呼んだ。スタンパーとかいう聞いたことない名前。そしてそのスタンパーという人が三人組の後ろから現れる。眼鏡を直しこちらに近づいてくるスタンパー。
「てめぇが黒猫か…。こんな田舎でお目にかかれるとは思わなかったぜ」
伝説の男の首を持って帰ればボスも満足する、と言うスタンパー。それってつまり…殺す気満々ってこと?なんか大変な事になってない…?
(スタンパー=ウィルソン!?黒猫と同様…拳銃一つであらゆる暗殺をこなしてきたというマフィアの殺し屋…)
「なんだてめぇ!こいつが見えねぇのか!?よく見ろ!ホレホレ!!」
「知ってるよ。1度手合わせしてみたいと思っていた…」
ウドニーさんが必死に刺青を見せるが意味はなく、スタンパーは笑うだけ。様子から見て大抵刺青を見せたら今まで相手は逃げていたのだと思う。でもスタンパーは逃げる素振りすら見せない為、ウドニーさんは焦っているのがわかる。
(こいつ…)
「…四ヶ月程前…。闇の商人トルネオ=ルドマンの屋敷が何者かに壊滅させられた時あるウワサが流れた…」
2年前に死んだはずの黒猫が掃除屋となって生きている、と。まさか本当だったとはなと笑いながら銃を取り出すスタンパー。
(な、何だコイツ…。何でビビらねぇの…!?)
汗を流しながら後ろへ下がっているウドニーさんにスタンパーは煙草をくわえながら「見な」と言い、コインを見せる。そのコインを指で上に飛ばし、それに向けて撃つ。驚くウドニーさんと私。落ちてきたコインは所々かけており、三人組はコインを見て喜んでいた。
「…どうだい?俺の腕前は。相手にとって不足ねぇだろ?黒猫…」
「…えーと…」
と言われてもウドニーさんは偽物の黒猫でしかも武器さえ持っていないのだ。不足も何もない。このままだとウドニーさんは殺される。私はいざとなったら守れる様に剣の柄に触れていた。
(流石に気づいたみてぇだな。ハッタリだけで何とかなる相手じゃねぇって事に…。さて…どうする本物は…)
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