「ふーん…。ユヅキの奴どうしたんだろうな」
「うん…心配だよ…」
スイーパーズ・カフェでシズクさんと一緒にいた時に話したものの、様子がおかしい事もなかった。その後も特になしで。でも前の訓練の時にほんの一瞬だけど少しだけ様子がおかしかったのは覚えてる。
『ユヅキさん?どうしたの?』
『え?…いえ、少しだけ考え事をしていただけです』
あの時訊いてもはぐらかされてしまったが、どう見てもいつものユヅキさんの表情ではなかった。寂しそうな、辛そうな、どこか自分を責めている表情。どうしてもあの表情が忘れられなくて気がかりだった。
「明」
「…わっ!?」
不意にトレインさんに頭を撫でられてしまった。ユヅキさんの事を考えていたから余計に驚いてしまう。くすぐったいと思いながらトレインさんを見ると頭から手が離れて。
「明がそんな表情でどうするんだよ」
「あ…!」
笑いながらトレインさんに言われてハッとした。…本当だ。私が悩んで暗い表情をするなんて駄目だ。逆にユヅキさんに心配かけてしまう。きっとトレインさんもそう伝えたいんだよね。そう思った私は彼に微笑んでお礼を言う。
「ありがとう、トレインさん」
「…ま、今度会った時あいつがいつもみたいに生意気じゃなかったら調子狂うからな」
嫌味を込めて返しているけど多分トレインさんも心配してくれているのだと思う。ユヅキさん…今はどうしているのだろう。会えるのならユヅキさんにもシズクさんにも会いたいよ。
イヴちゃんがスヴェンさんと話し終わったみたいで立ち上がり、トレインさんに携帯を返す。やっぱり嬉しそうで代わって良かった、と思う。この後私達は各自で街を見回る事にした。
「えーと、後は何か飲み物と…」
私は9日間私達だけで過ごすわけだから食べ物と飲み物を買っておかないと駄目だと思った私は店へと足を運んだ。お金の事を考えて一旦ホテルからアジトで泊まる事にしたけど、本当は料理した方が良いとはわかっているのだが恐らく私達三人共作れないはず。なので皆が食べれそうな食べ物を買った。後はそれぞれが飲む飲み物を買って…っと。
「トレインさんは一択でいいとしても、イヴちゃんはどうしようかな」
飲み物コーナーに並べられている物を見て何がいいかを考える。目に映ったのはコーヒー。これを飲む人と思い浮かべた時出てくるのはスヴェンさんと私のお父さん。よく飲めるなぁ…と見る度に思っていた。
私はコーヒーが飲めない。砂糖を入れてもどうにも飲めなかった。なら試しにとお母さんに言われて飲んだ紅茶は飲めて今では凄く好き。お母さんやお父さんは私に何か飲み物を買う時は紅茶だと決まっていると言ってたくらいに。…そういえば前にこの世界でもスヴェンさんに「明は紅茶が本当に好きなんだな」と言われちゃったっけ。…って思い出してる場合じゃない。
とにかく飲めそうなのを選び、他にも色々な物が入っている籠に入れて歩こうとした。
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