「…おいお前!化けるのがうまいのはわかった!さっさと元に戻りやがれ!」
気を取直して怖い顔をしながらトレインは変装しているシャオリーに指をさす。それでも笑いながらシャオリーは答える。トレインをよく知りたいだけだと。18歳で特例のNo.]Vに選ばれた男で、秘密結社[クロノス]を抜けた今でも一目置かれている彼を。
「一体どんな人物なのか?気になるじゃないですか」
シャオリーは今変装しているトレインの顔をビリビリと取る。次に現れたのは―…。
「ねぇ…?トレインさん」
「「!」」
クリードだった。その瞬間、場の空気が一気に凍る。
「…聞く所によるとあなたはクリードと因縁の仲らしいじゃないですか。ぜひその辺りの話も詳しく教…」
シャオリーの言葉を銃声が遮った。弾丸が髪にかする。撃ったのは一人しかいない。
「…よく知りもしねぇで俺の前でその顔[ツラ]見せねぇ方がいいぜ。次は当てるからよ」
本気の言葉。トレインなら次は確実に当てるだろう。少しの間沈黙になる。口を開いたのはシャオリーだった。変装をとき、元の姿に戻ったシャオリーはトレインの中の"闇"を垣間見られた気がしたと言う。そこでどこからかエンジン音が聞こえた。それは空で飛んでる物だ。
「残念…時間切れ[タイムオーバー]か…。あれは星の使徒の飛行艇ですよ。彼らは城が爆発する直前に脱出していたみたいですね。ただ…場内での会話を傍受した限り、あれにはクリードは乗っていないでしょうけど」
会話を傍受。内部の状況を外に伝える為にあの時の番人三人のスーツに通信機を仕込んでいたらしい。トレインがクリードと時の番人三人―…奇襲用チーム"ケルベロス"はどうなったかを尋ねる。両者とも行方不明でケルベロスの方は突然通信が途切れてそれっきりわからないみたいだ。
「しかしそちらに気をとられてばかりもいられません。僕はこれからあの飛行艇を追跡しますのでこれで…失礼します」
「…冷たいね」
「…その前に」
行こうとするシャオリーが足を止めこちらに振り返り、明を見る。彼女は一応シャオリーの方を向いてるが見ているのは恐らく他の何か。もしくは何も見ていないのかのどちらかだろう。
「明さん…ですよね。あなたは司という人と友達なんですよね」
「知ってるのか」
「司?」
聞いた事が無いスヴェンとイヴは首を傾げる。二人に説明するトレイン。彼女の親友で今は星の使徒の一員だと。
「セフィリアさんがあなたに彼女について聞きたがっています。ついてきてくれませんか?」
明に手を差し延べるシャオリー。だが彼女は反応しない。困ったように顎に手を当てて考えるシャオリー。
「…無理矢理連れていくのは少し抵抗がありますが…」
「わりーけど」
「!」
「明は渡さねぇよ」
軽く彼女を抱きしめるように自分の胸へ引き寄せる。今ここで彼女を渡せばどうなるかもわからないし、何より今の彼女を放っておく事など出来ない。自分が傍にいないと。そんな色んな感情がこみ上げてきてトレインはそう言った。
断られたシャオリーは微笑む。どうやら先程の言葉通り無理矢理連れていく気はないらしい。
「…わかりました。では次の機会に…」
「お断りだね、キツネヤロー」
そんな皮肉の言葉にもシャオリーは笑顔で「さよなら」と返していった。
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