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練習後、部活のメンバーで揃って学校を後にし、飯でも食って帰ろうかと話していると、正面に小さな人影を見つけた。男子にしては随分と小さいシルエットに恐らく女子だろうなと予想していると、思った通りそこに立っていたのはセーラー服を来た女の子だった。うちの制服じゃない。それに、あの制服は何処かの女子中学のものだった気がする。中学生が遅い時間にいるなあ。首を傾げつつその子を見つめていると、隣を歩いていた黒尾が眉間に皺を寄せたままゆっくりと口を開いた。


「名前…?お前、ここで何して…?」


どうやら彼女は黒尾の知り合いらしい。黒尾の声に振り返り、ペコッとお辞儀をしてくる名前と呼ばれたその子に眉根を顰めた黒尾が歩み寄り、その後ろに研磨も付いていく所を見ると、研磨とも面識があるようだ。
どういう知り合いなのだろうと様子を見ていると、目を細めた黒尾が少しきつい口調で声をあげた。


「今何時だと思ってんだ?もう暗くなってんだろ」

『…ピアノのレッスンの後で…』

「まさかいつもこの時間じゃねえよな?」

『…今日は、特別遅くて…』


黒尾とも研磨とも視線を合わすことなく答える名前さん。あまり仲が良くないのだろうか?不思議に思いながらも3人のやり取りを伺っていると、大きくため息をついた黒尾が振り返った。


「悪い、コイツ連れて帰るわ」

『いいよ、大丈夫。クロも研磨も友達と一緒に帰りなよ』

「…本気で言ってたら怒るよ、名前」

「研磨の言う通りだ。お前は女なんだぞ?1人で帰して何かあったらどうすんだ」


何処か責めるようにも聞こえる黒尾と研磨の声。おいおい、何もそんな言い方しなくても。顔を俯かせる名前さんに、眉を下げて海と目を合わせると、俯いたままの名前さんはもう一度こちらに向かってお辞儀してきた。「お邪魔してすみませんでした」と深々と頭を下げる彼女に慌てて首を振ると、「悪いな、夜久、海」眉を下げてそういった黒尾は研磨と名前さんを連れてその場を歩き去った。
小さくなっていく3人の背中を見送っていると、この場に居る全員が気にしていた事がリエーフの口から零された。


「…あの子、黒尾さんと研磨さんのなんなんですかね?」

「…幼馴染みとか…?」

「それにしてはやけによそよそしい気がしたけどな」


リエーフの問いかけに首を傾げながら答えた犬岡。そんな犬岡の声につい思っていた事を口に出すと、「確かに」とリエーフが数回頷いた。まあ、俺らが気にしたって仕方ないだろう。気になるなら明日にでも黒尾に聞けばいい。
「今日は俺たちも解散するか」「そうだな」と海と相談し、このメンバーでの飯は延期とすることに。出来れば研磨や黒尾も一緒の日がいいと思うのは全員らしく、誰も異論は無いらしい。途中の分かれ道で皆と別れ、1人帰路について歩いていると、不意にさっきの“名前さん”の顔が頭を過ぎった。


“お邪魔してすみませんでした”


そう言った彼女の寂しそうで悲しそうな表情が、どうしても忘れられなかった。

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