赤司の作戦
「こんだけ人数集めてどうするつもりだよ?」
青峰くんの言葉に、その場にいた全員の視線が赤司くんへとうつった。
喫茶店での赤司くんの言葉通りに黄瀬くんや緑間くんも集められて、僕たちは今ある病院の前にいる。
不審そうに赤司くんを見る青峰くんに、赤司くんはふっと口角をあげた。
「緑間、お前も彼女と知り合いだったんだね」
「…それはこっちの台詞なのだよ」
「て、おい!俺はスルーかよ!!」
「説明をしろ!説明を!」と眉をつり上げる青峰くんに、赤司くんは今度こそ視線を合わせた。
「分からせてあげたいんだよ、彼女に」
「何を?」
「1人じゃないことを」
「は?」と頭にハテナマークでも浮かびそうな青峰くんに赤司くんが苦笑いを溢したとき、彼の携帯が鳴った。
「…そうですか。…はい、分かりました」
淡々とやり取りをする赤司くんを見てから、視線目の前の病院にうつした。
不安な思いで病院を見つめていると、携帯をきった赤司くんがその場にいる全員に「聞いてくれ」と声をかけた。
「苗字さんは見つかったよ」
「!!ホントか!?」
「ああ、それで今は…」
「この病院にいる」その言葉にすかさず中へと駆け込んだのは青峰くんや火神くんに黄瀬くん。
それに一歩遅れて、全員が動き出すと、看護師さんから注意をうける。
けれど、受付で病室の場所を聞いた青峰くんたちはそんな事は知らないと言わんばかりに走り出した。
エレベーターよりもこっちが早いと階段をかけ上がる全国きってのバスケプレーヤー達は端から見ればかなり異様だろう。
苗字さんのために集められたのは僕らが彼女の病室に飛び込んだとき、ふと赤司くんの言葉を思い出した。
多分、彼は喫茶店でのあのときからこの瞬間を分かっていて、だからこんなにもたくさんの人間を集めたのだろう。
彼女を思う人間はこれだけ居る、そう分からせるために。
あの赤司征十郎を動かせる女の子なんて、きっとこの先彼女以外には現れない。
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