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18 洛山の赤色主将と2


「苗字さん、」

『!』


「待たせてしまったかな?」と申し訳なさそうに眉を下げている赤司くんに、ブンブンと首をふった。



“実家に用があってそっちに行くので、少しだけ一緒に出掛けてくれないかい?”
そう赤司くんから連絡があったのが3日前。
もちろん、と返事を返しすと、赤司くんから“ありがとう”と返ってきた。


「何処か行きたい所はあるかい?」

「と言っても、お互い知らない所はそうそうないね」と笑う赤司くんに、つられて笑みを見せる。
初めて会ったときから、時折連絡をくれる赤司くん。
でも、会うのはこれが二回目なので、少し緊張していたけれど、どうやら杞憂だったようだ。


『〈赤司くんは行きたい所はないの?〉』

「…特にはないかな、」

『〈じゃあ、街を歩きながら、何か探そうか〉』


「行き当たりばったりも案外楽しいよ?」と笑うと、目を細めて柔らかく笑った赤司くんは頷いてくれた。
それに良かったと胸を撫で下ろすると赤司くんの手がスッと差し出された。


「はぐれたら困るだろう?」


どこか意地悪くも聞こえる言い方。
でも、全然嫌な感じはしなくて、笑って頷いてその手をとると、何故だか笑われてしまった。


それからブラブラと街を見て回った。
時折気になる所があるとそこに寄ってみたりして、気に入ったものがあれば購入もした。
そのとき、赤司くんがお金を払おうとするからそれを止めるのは少しだけ骨を折った。



「今日はありがとう」


休憩しようとベンチに並んで座っていると、ふいに赤司くんにお礼を言われて、一瞬キョトンとしてしまった。


『〈ううん、こちらこそありがとう!〉』

「いや…俺は礼を言われるようなことはしてないよ」

『〈そんなことないよ、赤司くんと一緒でとっても楽しかった、だから、ありがとう〉』

「…ああ、俺も楽しかったよ」


ふっ、と笑みを溢した赤司くん。
その目はどこか懐かしそうに細められていた。
何かを思い出しているような彼に首を傾げると、そんな私に気づいた赤司くんが視線をこちらに向けた。


「ああ、すまない、少し中学時代のことを思い出していてね」

『〈中学校のこと?〉』

「こんなに、心を休ませられたのはその時以来だと思ってね」


どうして中学のときだけなのか、と疑問に思いながら赤司くんを見つめると、私の思いに気づいたように赤司くんはどこか悲しそうに笑ってから口を開いた。


「…最近まで、間違っていてね」

『〈間違い?〉』

「…あまり、いい間違い方ではなくてね、
それもあって、こんな風に笑う機会はなかなかなかったんだ」


「だからありがとう」とまた笑いかけてきた赤司くん。
懐かしそうにそれでいて、とても安心したようなその笑顔になんだかこっちまで嬉しくなって笑ってみせると、驚いた顔をしてから面白そうに笑った赤司くんが手を伸ばしてきて私の頭を撫でた。


「君に会えて良かった」

『〈それは私の台詞だよ、実渕さんに感謝しなくちゃ〉』

「ふっ、ああ、そうだね
今度は玲央も連れてくるよ」


「そしたらまた会ってくれるかい?」と微笑みながら聞いてきた赤司くんに何度も頷いてみせると、「それは良かった」とわたしの頭を撫でていた手をおろした彼がベンチから立ち上がった。


「そろそろ行こうか」

『コクッ』


差し出された手を掴んで立ち上がると、それを確認した赤司くんはまた町の方へ歩き出した。




結局、その日は日が暮れるまで遊び倒して、最後は家まで赤司くんが送ってくれた。
その日二人でとったプリクラをしばらく携帯の待ち受けにしていたのはここだけの話。

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