夢小説 完結 | ナノ
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11 秀徳のハニーブラウンさんと


バキッ、
足元から聞こえた音に下を見ると、白いボードのようなものが足の下にあった。
なんだ?と思い拾ってみると、190の男に乗られたそれはフレームの所からボードの面にいくつか亀裂が入っていた。


『!』


ボードを裏にしてみたりしていると、目の前に小さな影が現れた。


「ん?」

『…、』


じっと俺の手元を見てくるソイツは俺よりもはるかに小さい女だった。


「あー…、これお前のか?」

『(コクン)』

「悪い、」


そっと女にボードを渡すと女はゆっくりと頭を横にふった。
「弁償する、」と言うと、慌てたように今度は何度も頭をふって、それから何かを伝えようとしているのか手や体を思いっきり動かしてるソイツに首を傾げると、女はボードを手にとってそれに備えついていたペンをみて、くの字型に曲がったそれに悲しそうに目を細めた。


「あー…大丈夫か?」

『…』


覗き込むように女の顔を見ると、女は驚いた顔をしてから笑顔を見せた。
それから自分の喉を指差しながらゆっくりと首を横に降った。


「お前…話せないのか?」

『(コックリ)』


頷いた女はまた悲しそうに顔をうつ向かせた。
なるほど、このボードはこいつの会話の手段だったのか、
そう考えると、ボロボロになったボードに余計に罪悪感が生まれた。


「おい、やっぱり弁償させろ」

『!』


ブンブンと首を横にふって、何か言いたそうにする女にすっと自分の手を出すと、女は数回瞬きをした。


「ここに書け、」

『!!』


俺の言葉に顔をあげた女は少し微笑んだあと、細い指で手のひらに文字を書いていく。


『〈おとしたのは、わたしのふちゅういなので、きにしないでください〉』

「けど壊しちまったのは俺だ、お前にとって大事なもんだったんだろ?それ?
だったら弁償ぐらいさせてくれ」

『〈でも、〉』

「頼む」


女の書く手を掴んで言うと、女は困ったように俺を見た。
それから、少し考えるような顔したあと、また手のひらを指を乗せた。


『〈じゃあ、ほかにおねがいがあるんですが…〉』

「他に?」


コクリと頷いた女は微笑みながら指を動かした。


『〈今からこのボードを買いに行きます。でもこの辺の地理は詳しくないので、一緒に行ってくれませんか?〉』

「…行くだけ?」

『〈はい〉』


ニッコリと向けられた笑顔に、どこか腑に落ちない顔をしていると、『〈ダメ、ですか?〉』と手のひらに書かれたものだから、渋々頷いてしまった。




「苗字、やっぱり俺が払うよ、」


ボードを売っている店について、二人で店内を見てる途中にそう言うと、苗字はもちろん首を横にふった。


「いや、けどよ…」

『〈こうして、ここまでいっしょに来ていただけただけでじゅうぶんです。〉』


俺の手をとってそう書いて笑顔を見せてくる苗字。
それでもやっぱり納得出来ずに苗字に口を開こうとしたがそんな俺に気づいているのかいないのか、いくつかあるボードの中から一つを手に取った苗字は1人でレジへと歩いて行く。


「…是が非でも払わせねぇつもりだな…」


なんとも頑固な彼女に小さくため息をついたとき、ふと目に入ったのはキーホルダー。
そういえば、さっき苗字がここで何かを手にとっていた。自分の記憶を辿ってなんとか苗字が手にしていたものを思い出す。


「(…これ、だったか…?)」


確信はないが、おそらく、というものを見つけた。
苗字はもぅレジにいないようだ。
とりあえず、そのキーホルダーを買って苗字を探していると、クイクイと服の裾を引かれた。


「ん?…ああ、いたのか」

『コクリ』


小脇にすでにボードを抱えた苗字はフンワリと笑った。
そんな苗字に「ほらよ、」と持っていた茶色の袋を渡すと、不思議そうにそれを受け取られた。


「…せめてもの詫びだ」


袋をあける苗字を見ながらそう言うと、中を見た苗字はすでにデカイ目をさらに大きくして驚いていた。


「…さっき見てたのこれだと思ったんだが…」


「違ったか?」と聞くと、苗字はブンブンと首を横に降ってから俺を見上げた。


『〈本当に貰っていいんですか?〉』

「…それでいいのか?」

『〈はい!!とっても嬉しいです!!〉』


キラキラと効果音が付きそうな笑顔を向けられて、思わず頬が緩む。
女なんて回りにいくらでもいるが、こんなタイプは初めてだ。

キーホルダーを袋からだして、さっそくボードにつける苗字を見ていると、つけ終わったのか顔をあげた苗字は嬉しそうに笑いかけてきた。


『〈宮地さん、本当にありがとうございます!〉』

「おー、」と返事を返して苗字の頭を撫でると、また向けられる笑顔。
不謹慎ながらも、その笑顔を見て、苗字のボードを踏んだのが俺で良かった、なんて思ってしまうのだった。

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