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2 誠凛の光と


「っし」


いつもより早く終わった練習にもの足りなさを感じて、仕方がないからストバスに来て体を動かしたのはいいものの、一人でするには限界がある
帰りに黒子を誘ったが、先客がいるとかなんとか言われて断られた


「(…そろそろやめるか)」


何本目か分からないシュートを決めたところで、鳴った腹の虫
そういや腹が減ったな、と汗を拭きながら身支度を始める

いつもの練習に比べれば格段に落ちる量だが、やっぱり減るもんは減るのだ
ちらりと携帯を確認してから、鞄を持ち上げて向かったのは、黒子もよくいくマジバだった







「火神くん?」

「ごほっ」


トレイいっぱいに乗ったハンバーガーをほお張っていると、目の前にいきなり現れたのは自分の相棒でもある黒子
どうしてここにいるんだ、と言うように詰まったものを流し込みながら黒子を見ると、黒子の視線が俺から少しずれた


「ん?誰だお前?」


黒子の視線の先を追うと俺たちのテーブルを見ながら立っている女がいて、思わず眉を寄せてそいつを見ると、ビクリと跳ねた小さな肩
誰なんだと尋ねようと黒子を見ると


「い゛っ!!」

「女性になんて口の利きかたをするんですか」


テーブルの下にあるはずの足に強烈な痛み
黒子にやられたそれに、思わず痛む部分を押さえていると、今までに聞いたことがない黒子の声が耳に入った


「大丈夫ですよ、火神くんは僕のチームメイトです」


さっきとは打って変わった優しげなその声はもちろん俺ではなく、さっきの女に向けられていた
女は黒子の言葉にホットしたように息を吐くと、テーブルの上にあった四角い何かを手に取った


『<苗字名前です、よろしくお願いします>』

「え…」


一瞬、動きが止まってしまった
女の手に握られたボードから視線を黒子に移すと、黒子は小さく頷いた


「えっと、あー…火神大我だ、」


よろしくな、と返すと、苗字は一度瞬きをしてから、またボードに何か書き始めた


『<かがみってどう書くんですか?>』

「は?どうって…」


「こうだよ、」とペンを受け取って、小さな手の中にあるボードに書き込むと、苗字のデカイ目がキラキラと光ったものだから、一瞬胸のあたりがむず痒くなった


『<火の神、だなんて…カッコイイ!!>』


目を輝かせてボード見せてきた苗字
そんなにカッコイイのか?と尋ねると笑顔で頷いて返してくる苗字

たぶんこーゆーのを“くったくのない”笑顔とか言うのだろう
目の前でいまだにキラキラと笑う苗字に思わず吹き出すと、笑顔で黒子に話しかけていた苗字がこっちを向いた


「いや、わり…なんつーか、面白いな、お前」


「よろしくな、」と今度は手を差し出して笑顔を向けると、さっきと同じくらい満面の笑みを浮かべた苗字の白い手が俺の手を握ったのだった。

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