夢小説 完結 | ナノ
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福井がやり直す 後編


「よっ!来たな」

「おう、お邪魔させてもらうぜ」


「こんばんは」そう言って、うちにやって来た今吉、笠松、宮地の三人に笑う名前はもう誰が見ても妊婦だと分かるほどお腹が大きくなっている。


やり直したあの時間の翌日、俺は名前の両親に挨拶にいった。
俺たちは所謂“出来ちゃった婚”というものをするので、もしかしたら親父さんに一発くらい殴られるかもしれない。
そう覚悟して、彼女の家へ行くと、案の定、頬に一発気合いを入れられた。
人に殴られた経験なんて今までなかったので、ものすごく痛かった。
けれど、


“娘を、そしてその子供を、しっかり守ってくれ”


名前の親父さんは、確かにそう言ってくれた。
あのときは、思わず泣きそうになったものだ。


“こっち”に戻ったきたのはそのすぐあとで、過去にいたのは夢だったんじゃないか、と笠松に掴みかかってしまった。
あれは申し訳なかったな。

三人と笑い合う名前を見ていると、「そういや、」と宮地が思い出したようにこちらを見た。


「もう分かってるのか?子供がどっちか」

「ん?そういやぁ…」

『…ふふっ、実は…この前もぅ聞いてきたんだよね』

「はい!?」


ちょっと待て。聞いてないぞ!?
驚いた顔で名前を見ると、彼女が愛しそうにお腹を撫でた。
「どっちなん?」と首を傾げる今吉に、名前は笑顔で答えた。


『男の子!』

「ま、マジで!?」

『うん、もう決まりだって』

「うおっしゃあああああああ!!」


思わずガッツポーズで叫んでしまうと、笠松たちが呆れたように笑う。
男か、そうか。
緩む口元を隠さずに、名前のお腹を撫でる。
「嬉しい?」「おうよ!一緒にバスケしてぇな」「気が早いなぁ…」「ははっ。あ、けど女の子でも嬉しかったからな」「本当?」「おお、名前似の女の子もいいな」「…そこの二人、いちゃつくなら帰るで?」
あ、そうだった。こいつらもいたのか。
顔を真っ赤にした名前が俺から距離をとると、今度は今吉が近づいてきた。


「パパより大きくなれるとええなぁ」

「あ!てめぇ今吉!人の嫁さんに近づいてんじゃねぇ!!」


「離れろ!」今吉の腕を引っ張っていると、クスリと笑った名前が宮地と笠松に向き合う。


『二人も楽しみなんじゃない?子供』

「そ、それは…まあ…」

「つーか、俺はまだ結婚してねぇよ」

『…ふふ、じゃあ結婚式が楽しみね』

「ほら、いつまで立ち話してんだよ。そろそろ座れ」

『過保護だなぁ』


そりゃ、お前一人の体じゃないからな。
名前を座らせてから客である三人に座ってもらい、ようやく今夜の飲み会が始まる。
高校時代の話から、職場の愚痴まで、下らない話で盛り上がりながら、ふと名前を見ると、眠そうに目を擦っていた。
「眠いなら先に寝ていいぞ?」「う、ん…ごめんなさい」「気にすんなよ、おれらこそ悪いなか「いいえ、ゆっくりしていって下さいね」
立ち上がって寝室へ向かおうとする名前。
寝室までついて行こうと、立ち上がると「過保護やなぁ」「過保護だな」「過保護だ」と冷やかされたが気にしない。
過保護で悪いか。









『ごめんね、健介。もぅ戻っていいよ?』

「ん…寝るまで一緒にいる」

『…ふふ、ありがと』


寝惚けた声も可愛いな。
なんて思いながら、ダブルベッドに横になる彼女の頭を撫でていると、「健介、大好き」だなんて、言ってくれるものだから、つい顔を寄せてしまう。


「俺もだよ、馬鹿」


そう言って、額に口付けて顔を離したときには、名前は小さな寝息をたてていた。

あのとき、笠松たちを信じて良かったな。
眠る嫁さんの頬を撫でてから、あいつらの所へ戻りながら、酒の力で礼くらい言うか、と思うのだった。

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