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中学3年になりました7


『離してっ』

「えーそんなにつれないこと言わないでさ、俺と遊ぼうよ」


ああ、誰か私に今すぐエンジャル(幸くん、清志くん、虹村くん)を補給して下さい。

二度目の高校受験を来月に迎えた私は、本来ならば精神年齢はとっくに30を過ぎているので焦ることなく、まぁ大丈夫だろうと、塾にも行かず街を歩いていると、「ね、君高校生?可愛いねー!」となんとも軽そうな男が話しかけてきた。
「中学生なんですけど」「え?マジで??」「はい」「んー…大丈夫っしょ!とりあえずさ、俺と遊ぼうよ」
何が大丈夫なんですか。
チャラチャラした男に「結構です」と返して歩き去ろうとすると、そうはさせまいという感じで男に腕を捕まれて冒頭に至る。


「ね?いいじゃん、ちょっとだけ」

『っこの』


いい加減にして!
そんな意味を込めてニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男を睨んでいると、「あ、ここにいたの?」ちょっと高めの、でも男の子の声がした。


「姉ちゃん急にいなくなんなよなー!」

『え』

「たく、母さん達も探してたぜ?今呼んだからもうすぐここ来ると思うけど……って、あれ?そっちの人は?姉ちゃんの友達?」

「っんだよ、ガキと一緒かよ」


「ちっ」と舌打ちをしてから私の腕を離すとチャラ男はそのまま歩いていった。
ポカーンとしながらその様子を見ていると、「お姉さん大丈夫?」と苦笑い気味にさっきまで私を“姉ちゃん”と呼んでいた少年が首をかしげた。可愛い。


『あ、う、うん。ありがとうね』

「いやいや、よく母ちゃんが“女の子には優しくしなさい”って言うからさ」


「実践してみました」そうニッとちょっと悪戯っぽく笑った少年。
ごめんなさい、ストライクです。
君の笑顔にハートが撃ち抜かれてます。

それにしても、年上には見えないけれどこの子はいくつなのだろう。
「君いくつ?」と尋ねると「小6っす!」まさかの返答。小学生に助けられるとは思いもしなかった。最近の子はしっかしていらっしゃる。


『本当にありがとね』

「いえいえ」

『何かお礼したいんだど…あ、お昼食べた?』

「え?…まだですけど…」

『良かったらご馳走させてくれない?大したものは無理だけど…』

「え…」


「ダメかな?」そうちょっと驚いた顔をする少年に聞くと、眉を下げた少年が「いいんですか?」と申し訳なさそうな声で尋ねてきた。


『もちろん。それとも何か用事があったりするかな?』

「いえ、それが…今日母さんいなくてなんかテキトーに昼飯済ませようとしてたところで……。
もしお姉さんがいいなら、一緒にお昼食べてもいいですか?」


恐る恐るといった様子の少年に私の心はそれはもぅ燻られた。
なんだこの子、可愛すぎる。
そりゃあまだ小学生だし、一人でお店に入るのはちょっと不安なのだろう。
「お姉さん?」と心配そうに顔を覗いてくる少年に「もちろん、一緒に食べよう」と笑顔で頷いた。

ちなみに少年の名前は高尾和成くんと言うらしい。










『へー、妹さんがいるんだね』

「まだ3歳なんですよ!」


「可愛いんですよ!」キラキラと目を輝かせながら話をしてくれる和成くんに君も十分可愛いよと言いたい。

お昼を食べることになった私たちは今ファミレスにいる。
和成くんが人懐っこい性格のおかげで気まずい雰囲気になる事もない。
なんて素晴らしい子なのだろう。


『道理で、和成くんがしっかりしてるわけだね』

「…そうですかね?」

『うん。えらいね』


ふと笑って向かい側に手を伸ばし、綺麗な黒髪を撫でると、和成くんは目を丸くした。
嫌だっただろうか?
慌てて手を離して「急にごめんね?」と謝るとブンブンと首を横に振られた。


「…嬉しいです」

『え?』

「俺、妹できてから、兄貴になんなくちゃって思って…あんまり母さんたちも構ってくれなくなってたから…なんか名前さんに頭撫でられたの、嬉しかったです…」


少しだけ頬っぺたを赤くして、エヘヘというように笑った和成くん。
ヤバい、この子私のツボを押さえすぎ。
思わず机を叩きたくなる衝動を抑えて、笑顔を作ると和成くんと目をあわせて笑う。


『和成くん、いい子だね。でも、甘えたい時は甘えていいんだよ』

「甘える?」

『そ、だから…してほしい事があったら言ってね』


「名前お姉さんが甘やかしてあげましょう」と冗談で言ってみせると、和成くんはキョトンとした後俯いてしまった。
あれ?もしかして引かれた…。
しまったな、と内心焦っていると「じゃあ」と小さな声が聞こえてきた。


「…もう一回、頭、撫でてもらってもいいですか?」


か、可愛いいいいいいいいいいいいいいい!!
何この子!何この子!!
和成くんにもぅ私はメロメロです。

耳まで赤くしてチラチラとこちらを見てくる彼に出来る限りの笑みを向けてから、ソッと席を立つと和成くんが「名前さん?」と上目遣いで見てきた。
それに笑って返して、彼の隣に移動するとキョトンとした目に見つめられた。


『嫌だったらごめんね?』

「へ?」

『ギュー!!!』

「!?」


和成くんを思いっきり抱き締めると、一瞬固まった彼は「名前さん!?」とすぐに慌て始めた。
それでも離さずにポンポンと背中を叩くと、だんだんと大人しくなってきた。
しばらくそのままでいてから離れて、和成くんを見ると再び目があった。
するとすぐに照れたようにハニカまれた。


「ありがとうございます、名前さん…」

『ううん、急にごめんね?嫌じゃなかった?』

「いえ!…恥ずかしかったけど…嬉しかったです…」


それなら良かった、と胸を撫で下ろして、自分のもといた席に戻って食べていた途中だったご飯を食べようとすると、グイッと服の袖をひかれた。


『?どうしたの?』

「…隣で食べちゃ、ダメ…ですか?」


上目遣いでそんなお願いされて断る馬鹿がいるでしょうか!?
「私も和成くんの隣で食べたいな」と中途半端に立ったままだった状態から、また腰をおろすと、和成くんの極上の笑顔を頂きました。


その後、ご飯を食べ終わった私たちはお店を出て帰ろうとしたのだけれど、「…もぅ会えなくなりますか?」と悲しそうに目を伏せた和成くんにもはやこの子狙っているのではないか、と疑いたくなった。
いや、もう狙ってたとしてもいいや。

けど、連絡を取ろうにも和成くんは携帯を持ってないとの事なので、私の番号を書いた紙を渡しておいた。

天使がまた1人増えました。

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