小学生になりました2
引っ越し先は早く決まって、お隣の神奈川となった。
北海道とか言い出しそうでおそれていた私は、案外近いところでほっとした。
「さ、ここが新しい名前ちゃんのお家よ」
車に乗って連れてこられたのは新たな家。
綺麗な見た目のそれを見つめていると、おばさんが手をつかんできた。
『おばさん?』
「ここのお隣さんにね、名前ちゃんと同い年くらいの子がいるのよー!」
グイグイと腕を引かれるままに進むのはもちろん隣の家。
新しい我が家に負けず劣らず綺麗なその家のチャイムをおばさんは意気揚々と鳴らす。
「はーい!」
中から聞こえてきたのは女の人のこえ。
すぐに玄関の扉が開くと、さっき返事をくれたのであろう女の人が立っていた。
「こんにちは、私隣越してきた者でございます、これ、どうぞお近づきの印に…」
おばさんはいつの間に用意したのか、綺麗に包まれた箱を渡すと「わざわざご丁寧にありがとうございます」と女の人は笑った。
なかなか綺麗な人だなーと思いながら見上げていると、自分と同じくらいの目線で何かが動いた。
『あ、』
「っ!!」
目が合うと慌てて反らしたその子はお母さんであろう女の人の足後ろに隠れていた。
「あらあら、幸男ったら…」
ほら、ご挨拶は?とお母さんに前に出された“幸男”くんは真っ赤な顔を俯かせている。
「…笠松…幸男、です」
小さな小さなそのこえに、うちのおばさんが可愛いわねー!と声をあげると、幸男くんは肩を跳ねさせた。
『えっと…苗字名前です、よろしくね幸男くん、』
出来るだけ、怖がられないように優しく優しく微笑むと、幸男くんの顔が一瞬だけ上がって私を見た。
でもまたすぐに俯いてしまって、うーん、難しいなぁ、と苦笑いしていると。
「よろしく…名前お姉ちゃん、」
『!!!!』
ズッキューン!!!
そんな音をたてて私の心臓は撃ち抜かれた。
なんですか、この可愛さは!
ニヤケル顔をなんとか押さえて不安そうにチラチラとこちらを見てくる幸男くん。
あー、可愛い、と、思いながらにっこりと笑顔を向ける。
『うん、よろしくね!』
これがあたしと幸男くんの初めての出会いであった。
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