夢小説 完結 | ナノ
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触れるーtouch


目が覚めると、まず目に入ったのはいつもと同じ自分の部屋の天井だった。
今日は休日。仕事もない。
もう少し寝ようかと目を瞑ろうと寝返りを打ったとき。


「…もう少し寝るんですか?」

『……へ?』


横を向くとそこにいたのはイケメン。
…あれ?
パチパチと数回瞬きをしていると、「大丈夫ですか」と柔らかな笑顔を向けられた。
そ、そうか。そういえば…昨日の夜、赤葦くんが家に居て、それで…。
慌てて起き上がると、「やっぱり起きるんですか?」赤葦くんも体を起こした。


『あ、赤葦くん、いつから起きて…』

「…30分ほど前ですかね」


…つまり、その間ずっと寝ている所を見られていたと。
カアッと顔を赤くすると、そんな私を見た赤葦くんが緩く笑んだ。 


「名前さんの寝顔、可愛かったですよ」

『…そういうのはいいよ…』


お世辞に喜べるような歳でもないしね。
小さく息をはいてベッドからおりると赤葦くんも困ったように眉を下げながらベッドからおりた。

さて、これからどうしようかな。

とりあえず朝食をとって、それから買い物に行こう。
赤葦くんがいつまでここに居られるかは分からないけれど、要るものは揃えた方がいいだろうし。
朝食をとりながらその旨を伝えると赤葦くんは分かりましたと頷いてくれた。

それからさっさと着替えてメイクをすると、昨日ここに来たときと同じジャージを着た赤葦くんと家を出る。
隣を歩く彼の手が自然な流れで繋がれたとき、きっと私はだらしないほど頬を緩めていただろう。











『え?それだけ?』

「はい。とりあえず必要なものは揃えたので」


買い物のために赤葦くんと訪れたのは大型ショッピングモール。
とりあえず服を買おうと割りとシンプルなものの多い男性用の店に入って赤葦くんに好きなものを選ばせると、思っていたよりも少ない量を持ってきた。


『…この店が合わないなら、他の店にも行こっか』

「いえ、割りと好みの店ですよ」

『じゃあなんで?もう少し買っておいた方が…』


不思議に思って首を傾げると、赤葦くんが気まずそうに頬をかいた。
あ、こんな顔もするんだ。
新しい一面発見。


「…嫌なんです」

『え?』

「…名前さんに迷惑かけるのが」


ちょっとだけ言いにくそうにそう言った赤葦くん。
チラリと伺うようにこちらを見た彼に目を丸くしてしまう。
あ、なるほど。そういうことか。
つい小さく笑ってしまうと今度は赤葦くんが首を傾げた。


『赤葦くんはいい子だね』

「…いい子って…」

『私が赤葦くんのためにしてあげたくてしてるんだから、迷惑なんかじゃないよ』


緩く首をふってみせたけれどそれでも赤葦くんはどこか納得できなさそうだった。
男の子だなあ。
きっと彼は彼女とデートに行ったら、迷うことなく彼女の分まで払ってあげるのだろう。
「ほら、もう少し選んで選んで」と赤葦くんの背中を押すと「それじゃあ、」赤葦くんは申し訳なさそうにしながら何着か手にとっていた。


『よし、じゃあ次は生活用品とかかな。1階に行こうか』

「はい」


赤葦くんが頷いたのを確認して歩きだすと、その隣を両手に先程買った服の入った紙袋を抱えた彼が歩く。
チラリと横目にその横顔を盗み見ていると、ふいにすれ違う女の子たちの声が耳に入った。


「…あの人カッコいいね」

「うん、思った!高校生だよね?」

「隣の女の人はお姉さんかな?」


「仲がいい姉弟なんだね」なんて会話が聞こえてくるものだから、つい苦笑いを溢してしまう。
“姉弟”か。確かにその方がしっくりくる。
こんなイケメンの弟がいたら幸せかもな。
ソッと視線を落としてそんなことを考えていると。


「名前さん」

『っえ?な、』


なに?そう聞こうと顔をあげると赤葦くんの大きな手が私の手を掴んだ。
はっとして赤葦くんと手を交互に見つめると、ちょっと不満そうに赤葦くんは眉を寄せた。


「…俺は名前さんが姉だなんて、嫌ですよ」

『……うん。私も』


弟だなんて嫌だよ。
そう口にはしなかったけれど、きっと伝わったと思う。
時折感じる周りからの視線は、赤葦くんがカッコいいからなのかそれともまるで姉弟のようなのに手を繋いでいる私たちに向けられているのかは分からない。
でも、視線なんてこれっぽっちも気にならなかった。

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