夢小説 完結 | ナノ
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13 先輩方にご注意を?


昼休み、今日は教室ではなく食堂に来ている。
何故かと言うと、この間仲直りをした仁王先輩からお昼のお誘いがあって、ここで食べようということになったから。

隣で、頼んだカレーから野菜を退かそうとする仁王先輩はやっぱり可愛く見えて仕方ない。


『先輩、野菜も食べなきゃダメですよ』

「…野菜は好かん、」

『子供ですか、』


呆れたように先輩を見ると、仁王先輩が拗ねたように唇をつきだした。
本当にまるで小学生だな、この人、と笑っていると、私と先輩が座る向かい側に誰かが腰をおろした。

えっ?と思ってそちらを見ると、眼鏡をかけた黒髪の人が笑顔を浮かべて座っていた。


「自分が苗字さん?」

『え?』

「…今吉、何の用じゃ…?」

「仁王が随分気に入った子が居るって聞いて、気になってもうてなー、
ちょっと会うて見たくなっただけやん?」


「今吉翔一や、よろしゅう」と更に笑みを深めたその人に慌てて立ち上がって頭を下げると、「そない硬くならんでええで?」と笑われた。


「あ、おい!今吉!何1人、先に行ってんだよ!」

「ったく、お前がここで食おうっていたからこっち来たんだぞ」

「ん?ああ、宮地に福井やん、」


「宮地」「福井」とどっちがどっちなのかは分からないけれど、そう呼ばれたのは明るい金髪の人と蜂蜜色をした髪色の人だった。

未だに立ったままだったため、チラリとこちらを見てきた宮地先輩と福井先輩に頭を下げると、二人もかるく挨拶を返してくれた。


「…早く今吉を連れてどっか行きんしゃい」

「ん?ああ、仁王か……ってことは、お前か!
最近仁王が大人しくなった理由は!」

『え?えっと…』

「ん?ああ、わりぃ、自己紹介がまだだったな」


「福井健介だ」と明るい金髪の人が笑顔で手を差し出してきた。
それを握り返して、今度は蜂蜜色の髪の人を見ると「宮地清志だ」と今度は頭の上に大きな手がのった。


「…宮地、」

「ん?ああ、わりぃわりぃ、なんかついな」


仁王先輩の言葉に笑いながら手を離した宮地先輩。
ついっとはどういう意味なのだろうか?
不思議に思いながら首を傾げていると、仁王先輩に袖を引かれて「座りんしゃい」と言われたので、仕方なく席につくと、立っていた福井先輩と宮地先輩も今吉先輩に並ぶように座った。


「…なんでそこに座る?」

「いいじゃねえか、ケチケチすんなよ」

「…これはまた、随分と面白い組み合わせだね」


ふいに聞こえた柔らかい声。
ゲッと言いそうなほど顔を歪めた仁王先輩の視線の先には幸村先輩と、確かバレー部の菅原先輩だ。


『あ、こんにちは』

「久しぶり、苗字さん」

「やあ、苗字さん
仁王と仲直りしてくれて良かったよ」

『あはは…』


幸村先輩に苦笑いしてみせると、先輩はそんなあたしには気にせず、仁王先輩とは反対の私の隣に腰をおろして、その隣に菅原先輩も座った。


「なんや凄い大所帯になったなぁ」

「…呼んでもないのに集まってくるからじゃ」

『いいじゃないですか、大勢の方が楽しいですよ?』


「ですよね?」と幸村先輩を見ると微笑んで頷いてくれた。
女の私でも羨ましくなるくらいの綺麗な笑顔に一瞬驚いていると、「あらら?苗字さん、幸村に惚れてもうたん?」と今吉先輩のからかうような声がして、慌てて首を横にふった。


『そんなんじゃないですよ、
ただ、幸村先輩の笑顔は綺麗だなって思っただけです』

「大概の女の子は幸村の笑顔にコロッと落ちるもんなんやけどなぁ」

『…そうですね、幸村先輩カッコいいですもんね……とゆーか、ここの学校ってカッコいい人多いですよね』


なんとなく思ったことを口にすると、今吉先輩は興味ありげに「自分も誰かおるん?そないに思う人?」と聞いてきたので、少し考えてしまった。


『…カッコいいって思うだけなら、ここにいる先輩方もカッコいいと思いますよ?』

「ちゃうちゃう、特別そないに見える男はおるん?って言う意味や」


“特別”
その意味が分からないほど馬鹿ではない。
今吉先輩の指しているのは、いわゆる“好きな人”と言うことだろう。

にやにやとしながら答えを待っている今吉先輩に苦笑いしながら口を開く。


『…いませんよ。
興味もありません』

「そうなん?」

『…もぅこりごりですから、』

「…もぅ?」


よく分からないというように眉を寄せる今吉先輩に小さく笑みを返してから、話題を変えるように「ここの学食美味しいですね」と幸村先輩に笑って見せると、察してくれた先輩も「そうだね」と笑ってくれた。


『そういえば、皆さん仲良しですね、
同じクラスなんですか?』

「いや、まぁ1、2年のときに一緒になったやつもいるけど…俺と仁王はなったことないよ?」


菅原先輩の言葉になるほど、と頷くと「苗字さんのクラスはなん組?」と聞かれたので「A組です」と返すと、宮地先輩があからさまに眉をひそめた。


「げっ!坂田んとこかよ…」

「お前苦手だよなー」

『坂田先生がどうかしたんですか?』

「ん、ああ、アイツ、なんかテキトーだろ?
だから、なんか苦手っつーかなんつーか…」


「な?」と同意を求めるように福井先輩を見た宮地先輩。
そんな彼に苦笑いをした福井先輩が「まぁ確かにテキトーだよな」と返した瞬間だった。


「だーれがテキトーだって?」

「「「「「「げっ!」」」」」

『あ、先生』


噂をすれば影とはまさにこの事だ。

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