11 緑のなのだよと鷹の目少年
剣道部の見学に半強制的に黒崎くんが行ってきた次の日。
その日のお昼は朽木さんと阿散井くんも一緒に食べることになったのだけれど、飲み物を忘れてしまい食堂の自販機へ。
自販機で飲み物を買ったときにお釣りの中に見つけたギザ十円玉。
久しぶりに見て、何かいいことがあるのかもしれないと思いながらそれを財布にいれて、買った飲み物をもって教室に戻ろうとすると、「真ちゃーん、もぅ戻ろうぜー?」「うるさいのだよ!!」「落ちちゃったものはもぅ戻って来ないって」「黙れ!」というやり取りが聞こえてきて、そちらを見ると、緑頭の大きな男の子と黒髪の子が水道の所にいた。
緑頭の子人は、何かをしきりに探しているようでく黒髪の子は苦笑いしながらそれを見ている。
『…あの、』
「ん?あれ?確か先輩は…ああ!噂の転校生ですよね!」
『え?あ、うん、よく知ってるね』
「そりゃあ、有名な人っすから」
「それに美人って噂だし?」とイタズラっぽく笑った黒髪の子に苦笑いしてから、何かを探し続けている緑頭の人に「何してるの?」と聞くと、不機嫌そうに眉を寄せたその子は初めて口を開いた。
「…落としたもの探しています」
『…落としたって水道に?それって…』
「もう流れちゃったんすよー!」
「黙れ高尾!!」
ケラケラと笑う黒髪くんに更に眉をしかめる緑頭の子に「何を落としたの?」と聞くと、綺麗にテーピングが施された指で眼鏡を押し上げた緑頭の子ち小さく息をはいた。
「…ギザ十です」
『え?』
「ギザ十です」
「あれ?先輩知りませんか?」
「縁がギザギザしてる十円っすよ!」と丁寧に教えてくれた黒髪に「知ってるよ」と返す。
いや、実際には知ってるどころか持っているのだけど。
『それってそんなに必要なの?』
「ラッキーアイテムです」
『ラッキーアイテム?』
「おは朝のです」
緑頭の子の言葉にあ、とう頷きながら頭に浮かんだのは毎朝やってる占いだ。
何の気なしに自分もたまに見たりするけれど、あれのラッキーアイテムにここまで執着する人は始めてみた。
『…それがないと困るものなの?』
「当然です。人事を尽くさない人間には何もできません」
『そっか、じゃあ…』
「はい、これ」と財布をあけて、先ほど偶然てに入ったそれを渡すと、緑頭の子と黒髪くんの目がこれでもかと言うほど大きくなった。
「ええ!?先輩、なんでこれ…」
『さっき自販機のお釣で出てきたの』
「…いいんですか、頂いて…?」
『うん、そんなに必要としている人がいるならその人が持ってたほうがギザ十くんも喜ぶよ』
「ね?」と冗談っぽく言うと、緑頭の子は少しだけほほを緩めて「…ありがとうございます」とお礼を言ってきた。
「あと、先輩の星座を聞いても?」
『ん?えっと、射手座だけど…?』
「…やはり…」
「『え?』」
何故か私の星座を聞いて、大きく頷いた緑頭の子に黒髪くんと一緒に首を傾げていると、緑頭の子がいきなり顔をあげた。
「緑間真太郎です。
これからもよろしくお願いします。」
『え?あ、うん。
苗字名前です。』
「あ!俺、高尾和成っす!よろしくお願いします!
てかさ、真ちゃん急にどうしたの?名前先輩に惚れちゃった??」
「なっ!」
「馬鹿な事を言うな!」と声をあげた緑間くんに「じゃあなに?」とニヤニヤとしながら聞く高尾くん。
面倒そうにため息をついた緑間くんは高尾くんから視線をこちらに向けてきた。
「今年出会う射手座の異性は幸運をもたらしてくれるのだよ」
「あー、だからか」
「…ですから、先輩、これからも何かあれば先輩に頼らねばならないかもしれません」
「いいですか?」と少し不安そうに聞いてきた緑間くんは年相応でなんだか可愛く見えて、小さく笑ってから「もちろん!」と頷くと、緑間くんはホッとしたような顔を見せてくれた。
そんな彼にまた笑ったとき、「あ、」と自分がまだお昼を食べていないことに気づいた。
『ごめん二人とも、私ご飯食べなきゃ』
「いえいえ、俺らこそ引き留めちゃいましたね」
『ううん、二人と知り合えて良かった』
「じゃあまたね」とてを降ると、高尾くんは振り返してくれて、緑間くんは軽く頭を下げてきた。
そういえば、この前にあった青峰くんの髪色は青色で赤司くんは赤色だった。
なんだかカラフルな後輩たちだな、と思いながら教室に戻ったのだった。
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