2 隣の席のオレンジくん
「俺が呼ぶまでここで待機な」
そう言って先生は教室の中に入っていった
ドキドキと高鳴る心臓の音を消すように胸をぎゅっと押さえて深呼吸を繰り返す
すると、大丈夫大丈夫、と言い聞かせるあたしのことなんて知りもしない、呑気な声が聞こえてきた
「苗字ー」
きた、そう思ってドアにそっとてを添えてゆっくりとドアを開けると注がれる視線に息を飲んだ
こっちこい、と手招きをする先生の近くに寄ると、とんっと軽く前に押し出された
『あ、えっと…転校してきた苗字名前です、よろしくお願いします』
ばっと顔を隠すように頭を下げると、クラスからの温かい拍手が聞こえてきて、少しほっとした
先生が拍手をやめさせて、あたしに顔をあげさせると席を指したので、そこへ向かう
席に向かうときも興味の視線は消えなくて、心臓はなりっぱなしだった
やっと席につくと、少しほっとした
すると、隣の席の子が話しかけてきた
「よぉ、」
『あ、黒崎くん!』
片手を上げてきたさっきぶりの(一応)顔見知りにホッとしてしると、黒崎くんが少し頭をかいた
「あー、そのよ、さっきは言えなかったけどよ…これからよろしくな」
少し笑ってそう言ってくれた黒崎くんに嬉しくなって何度か頷いていると、坂田先生のやる気のなさそうな声が飛んできた
「じゃあ、黒崎ー
お前苗字を案内してやれよー」
「はぁ!?」
「しょーがねーだろ、
うちのクラス女子がいねーんだからよー」
「頼むぞー」と無責任に言う坂田先生に黒崎くんは固まっていた
女子がいない、その言葉に周りを見渡すと確かに一人も女の子はいなかった
流石にこの環境はキツイ
でも、我慢しなければならない
この微妙な時期に転校を受け入れてくれたこの学校以外選択肢はなかったのだ
よし、と勝手に意気込んでいると、隣から黒崎くんに変な目で見られたのだった
prev next