夢小説 完結 | ナノ
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snow white 2


木吉さんと二人で城を抜け出して、森を歩きだしてからしばらくすると、森の開けた所から綺麗な川が見えた。
太陽の光に反射して、水が光って見えるその川は、なんだか神秘的だ。


『(綺麗…)』

「さすが、本の中だなぁ」


感心する木吉さんに頷いて返したところで、ガサッと後ろから音がした。
まさか、城から抜け出したことがバレた…?
思わず身構えてそちらを見ると、木吉さんの大きな背中が私を隠すように目の前に現れた。


「誰かいるのか?」

「…木吉鉄平か…?」

「お前は…」


木吉さんの背中を見つめていると、そこから力が抜けるのが分かった。
一体誰だったのだろう。
ヒョッコリと木吉さんの背中から顔をのぞかそると、そこにいたのは花宮さんと同じジャージを着た、額に黒子のある人だった。


「瀬戸…だよな?なんでここに…?」

「せ、せせせ瀬戸さんっ!ま、待ってくださ…」

「桜井もいるのか?」


慌てた様子で森のなかから出てきたのは、青峰くんと同じチームの桜井くんだった。
前に練習試合を見させてもらったときに、自己紹介をしただけなのに何でか謝られたな。
どうして二人がここに?
キョトンと首を傾げていると、「…瀬戸、その格好…」と木吉さんが少し驚いた顔をした。


「た、多分瀬戸さんは、お、王子だと思いますっ!す、すみません!すみません!」

「…なぜお前が謝るんだ?」


瀬戸さん、という人が王子様?
でも、王子様が登場するのはもっと後の気が…。
これは本当に白雪姫なのか疑わしくなっていると、瀬戸さんと目があった。


「…それは、なんの格好だ?」

『(あ、えっと…)』

「白雪姫だよ。そう呼ばれてた」

「…ということは、瀬戸さんがその王子様…ということ、でしょうか…?すみません!すみません!」

「だから、なぜお前が謝るんだ?」


不思議そうに桜井くんを見る瀬戸さんと、そんな二人を見て笑っている木吉さん。
これからどうすればいいのか?
呆けたまま3人を見ていると、ガサッと再び茂みの揺れる音が。
それに気づいた3人は顔つきを険しくすると、「下がれ」と瀬戸さんに言われ、二三歩後ずさる。


「…誰だ?隠れているやつ、出てこい」

「…嫌やわぁ。そない警戒せんでや」


この声に関西弁。
ハッとして声の相手を見ると、思った通り森から出てきたのは今吉さん、それに花宮さんだった。
不機嫌そうに今吉さんの後から現れた花宮さんは瀬戸さんを見ると、一瞬で怪訝そうな顔をした。


「…お前…その格好…」

「王子らしい」

「…似合わねぇにも程があんな」


呆れたような顔で息をはいた花宮さん。
その視線がふいに此方に向けられた。


『(な、なんだか見られてる…?)』


ジッと見てくる花宮さん。
一体どうしたのだろうか?
うろうろと視線をさ迷わせていると、そんな私を見た今吉さんがケラケラと面白そうに笑う。


「花宮、可愛えってハッキリ言えばええやん」

「はっ?誰がんなこと思ってるんだよ」


面倒そうに今吉さんを睨んだ花宮さんは「やっぱり白雪姫か…」と神妙そうに私に視線をうつした。
やっぱり?
それってどういうことだろう、と思っていると「やっぱりってどういうことだ?」と木吉さんも同じことを思っていたのか、首をかしげた。


「俺たちは“殺し屋”だ」

『(こ、殺し屋…?)』

「ガキ供向けに児童本なんかでは“小人”になってるがな」


小人が殺し屋?
目を丸くして花宮さんを見ていると「ぼ、僕も聞いたことあります…」と桜井くんが消え入りそうな声で呟いた。
童話って子ども用にリメイクされているものが多いのかな。
「桜井はなんなん?」「え!?た、多分…王子の従者か何かかと…」「なるほどなぁ」
納得したように頷いた今吉さん。
「とりあえず移動しよか」といってポンポンと私の頭を撫でた彼は、再び森の中へ入っていた。
そのあとを慌てて追いかけようとすると、「早くしろ」と花宮さんが手を引いてくれた。

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