1話 烏野 に 帰還
朝はまだ少し冷えるな。
少し肌寒い空気に腕を摩りながら、懐かしの体育館を前にする。何も言わずに来たけれど、皆驚くだろうか。小さく笑いながら、ゆっくりと扉を開けると、真っ先に目が合った田中が口をあんぐりと開けた。
『お久し振りです』
「お、おま…!久しぶりじゃねぇか!! 名前 !」
大声を張り上げた田中に笑顔で頷くと、「もぅ、いいのか?」とキャプテンの大地さんが心配してきた。
『はい、すみません…ホント、長い間留守にして…』
「元気になってなによりだよ」と優しく笑いかけてきたスガさんに感動していると、ふいに視線を感じた。
『あ、あの四人って…』
「おお!!1年達だぜ!」
「しょーよー!!」と西谷が呼ぶとそんな彼に負けず劣らず小柄男の子がやってきて、その後ろからついてくるように他の三人も歩いてきた。
『君が日向くん?』
「あ、は、はい!」
緊張したように固まった日向くんに「よろしく」とてを差し出すと、日向くんは顔を真っ赤にして握手してきた。
『後ろの君たちの名前も聞いていい?』
「あ、か、影山です…」
控えめに名前を告げたのは黒髪で長身の子。
『あ、君があの影山くんか、』
「月島蛍です」
「山口忠です」
「よろしく」と日向くん以外の一年生に挨拶すると、日向くんが不思議そうに聞いてきた。
「あ、あの…先輩?は?」
『え、私?私は2年の苗字名前です。マネージャーだよ、よろしくね』
笑ってそう言うと、「苗字名前?」と影山くんが少し驚いたように聞き返してきた。
「なんだ、影山、苗字のこと知ってるのか?」
「あ、い、いえ…」
大地さんの言葉に影山くんは慌てて口を閉じた。
「なんで、今までいなかったんですか? 」
『ちょっと、私情で…病弱なわけじゃないんだけど…』
「ホント大変だった」と苦笑いすると、月島くんはさして興味ないというように「そうですか」と返してきた。
「まあ、とりあえず、これでメンバー全員が揃うわけだ」
『はい!今日からまたマネージャーとして頑張らせたいただきます』
大地さんに向かってそう言ったとき、誰かが体育館に入ってきたのが見えた。
その誰かが誰か分かったとき、私は走りだしていた。
『潔子せんぱああああい!!』
その後ろでは、大地さんがため息をついていたらしい。
prev next