精霊達のレクイエム | ナノ


  06.


「・・・っ、リック様ご無事ですか!?」

「見て分からないか、五体満足だ。それよりお前の所には何人来た」


何が、なんて聞くのは野暮だ。
もちろんそれを分かった上で彼は言う。


「私の所には二人ほど来ました」

「そうか、じゃあ残りは全部モニカの所か・・・」

「・・・、・・・そうですね。でもお嬢様は上手くのらりくらりとかわしていそうですけどね」

「まあな、・・・やはり狙いはモニカか」

「・・・十中八九はおそらく」


普段はモニカの心配などさほどしないビジィーらが言葉を濁した。
剣術に自身のはある自分であったが、この従者もそれなりだ。本気を出せばもっと強いのだろうが、なんせそう実力を目にする機会がない。
相手が自分だと本気を出すどころか手合わせもしてはくれず。他人との手合わせなどもってのほかだった。
自分に剣先を向けた昔の事は、今も昔も人生最大の汚点だと嘆いている。


「モニカは無事だ。その実力は一番俺がよく知っている」


あいも変わらず鍛錬に付き合わない彼の代わりによくモニカが相手をしてくれていた。
初めは剣を持たす事に抵抗があったのだが、彼女が幼い頃に送り込まれて来た刺客がいたのだ。おかげでモニカは重症。全治三ヶ月の傷を負った。
幸いにして傷跡は残らなかったのだが、自分も城使いをしている身。四六時中傍にいられるわけではない。
悩み悩んだ末、武術を習わせ始めた。剣術しかり馬術しかり、ありとあらゆるものを。
父に指示を仰いだのだが、モニカに関しては、悪く言えば興味がない、良く言えば放任主義なのか。何も言ってはこなかった。
母にその事を言えば、苦笑して仕方ないわねと一言。
母に関してはモニカに興味がないどころか、むしろ溺愛とまではいかないまでも愛している。それは確かだ。

そんな訳で武術に精通しているモニカの実力はよく知っている。


「そうですね、リック様はシスコンでしたもんね」

「おまえな、そう言う事を言ってるんじゃないんだぞ・・・」


いつでもリック至上主義な彼であった。





* * * * *





まあ結果的に言うと作戦は成功した訳だが、私は只今説教中だ。


「アイツ等が能力者で、城の者だなんて聞いてないぞ」

「私が知ったのもついさっきよ」


腕と頬に切り傷が出来、髪は空気中に含まれていた湿気を帯びて膨張。
疲労困憊しているんだし少しくらい休ませてよと、抗議の声を上げれば睨まれた。


「第一そんな私に許可を出したのは兄様よ。そんなにも責めなくたっていいじゃない」


私だって好きで傷を負った訳じゃない。この場所にたどり着くまでに計四人の追跡者がさらに加わり悪戦苦闘していたのだ。
向こうは一筋縄じゃいかず能力を使ってきた。それを使ってくるあたり私もそう言う体質であることは承知であったようだ。まあ、追跡者の真ん前で力を使ったのは自分だが。

辺に気絶して転がされている人達に目をやる。
勿論命までは奪っていない。ただ気を失っているだけだ。



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