精霊達のレクイエム | ナノ


  07.


「それよりこの人達どうすればいいのかしら・・・」

「ここに転がしとけばいいじゃないですかお嬢さん」

「だけどねぇ?」


私の言わんとしていることに気づいたリックは片眉を上げた。実に器用だ。


「戻って報告をすればヤバイ事でもしたのか」

「い、いや、違うのよ!ただ感づかれたかもしれない程度で・・・」

「・・・、・・・何をしたんだ」


ボソリと風を煽っただけよと、言ってはみるが追求の手からは逃れられず渋々口にした。


「・・・、・・・・・・風で相手の手綱を切って、落馬させたわ」


はあ、とため息を吐かれた。


「相手の傷は落馬に伴ったものだけだが、不自然に手綱が切られていると?」


神妙に頷き返せば、また一つため息。


「終わった事は仕方ない、こんな所で時間を喰うのももったいないしな。早めに発つぞ」






* * * * *





結局は彼らを放置したままで私たちは進む事になった。
立つ前に彼らに詰問やらをして自白させないのかとヴィジーラが提案したのだが、彼等は腐っても城に仕える影だとリックが苦虫を噛み潰した。それで納得した。
自白させたいのは山々だがそう上手くはいかない事を知っているものだからしなかったのだろう。かえって時間のロスになりかねないのが目に見えていたようだ。

馬を走らせ私達はベルシア目指す。
兄リックと、ヴィジーラは馬を操り、私はそんな兄の後ろにいる。振り落とされないようにしっかりと腕を回して。


「兄様そんなに悔しがることないじゃない」

「・・・・・・」

「自白させるまでもなく理由なんて明確すぎるわ。どっちにしろ理由は私で間違いないんだし、聞いた所でどうこうなるものじゃないのを知っているでしょう?」

「まあ、な」


長男としての責務として捉えているのだろう、妹である自分を守ることを。だが私はそんなに守ってもらわなくてはならないほどか弱いなんて思っていない。
私が傷つけば自分のせいだと責める兄を少し苦手に思っている。
めったにそのような表情は見せることはないのだが、今の兄はそのめったとない時のようだ。


「兄様は自分が傷ついた時誰かのせいにする様な人ですか?」

「いや・・・、そんな事するわけない」

「それと一緒で、私もそんな風に思ったことは一度たりともないわ」


口ごもる兄に毅然と言い返せば唖然とした顔で見られた。
その表情に満足して、私は笑って兄の背中に身を任せた。





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