重なる手を払いのけるのは思いのほか勇気がいて。

俺は彼女が好きだ
訓練兵になって、ライナーの後ろにいた俺は、いつでも小心者だった
そんな俺にも笑顔で接してくれる長身の女の子がいた
175センチほどある彼女は、他の子とは違って、顔が近くて緊張した
そんな身長の彼女は、見た目よりも小心者で、可愛くて、すごく好きになっていた
でも彼女が目で追っているのは俺じゃなかった
彼女はバレていないと思っていたかもしれないが、俺には分かった

「ね、ねえ名前」
『なあに?』
「この間きれいな湖の場所を知ったんだ、い、一緒にいかない?」
『いいね!行きたいな。・・・ライナーも、どう?』

俺に向けていた目とは違う瞳をライナーに見せた

「ああ、俺も行こう。いいか?ベルトルト」
「う、うん。いいよ。」

ライナーも名前も負けず劣らず鈍感で、俺だけがこの状態に気づいていた







「おい、ベルトルト」
「何?」
「先行っててくれないか、ちょっと済ませたい事がある」
「わかった」

ライナーは俺が着替えている時、ライナーも着替えながら俺に言った
少しだけ穏やかな気持ちになった
ちょっとでも多く名前と一緒にいられる、それが嬉しかった
ライナーは先にどこかへ行ってしまったので、とりあえず名前と先に行くことにした
寮を出ると、名前はいた。白いスカートをなびかせている

「名前?」

俺は後ろから声をかけた
名前は震えていて、俺の存在に気付くと、俺の手をとって走り出した
見えない小屋の影にきて、彼女は背をもたれ、崩れるように座った
彼女は泣いていた

「え、名前・・・?」

俺も名前の隣に座りこんだ

『わ、私・・ライナーの事が、好き・・・』
「えっ・・・」

わかっていたのに、その言葉は俺の心臓にぶすっと刺さった

『私、ライナーのこと、好きってだけで、一緒にいれるだけで、いいと思ってた』

なのに、なのに・・・とつなげる彼女の瞳から、涙は止まらなかった

『クリスタに、見たことない笑顔で、話しかけてて、私っ・・・』

俺は彼女の手を握り、頭を撫でた

「泣いてて、いいよ・・・」

その言葉は、俺と名前に向けて言った言葉だった
俺も、泣きたかったんだよ、名前
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