重なる手を払いのけるのは思いのほか勇気がいて。
俺は彼女が好きだ
訓練兵になって、ライナーの後ろにいた俺は、いつでも小心者だった
そんな俺にも笑顔で接してくれる長身の女の子がいた
175センチほどある彼女は、他の子とは違って、顔が近くて緊張した
そんな身長の彼女は、見た目よりも小心者で、可愛くて、すごく好きになっていた
でも彼女が目で追っているのは俺じゃなかった
彼女はバレていないと思っていたかもしれないが、俺には分かった
「ね、ねえ名前」
『なあに?』
「この間きれいな湖の場所を知ったんだ、い、一緒にいかない?」
『いいね!行きたいな。・・・ライナーも、どう?』
俺に向けていた目とは違う瞳をライナーに見せた
「ああ、俺も行こう。いいか?ベルトルト」
「う、うん。いいよ。」
ライナーも名前も負けず劣らず鈍感で、俺だけがこの状態に気づいていた
▽
「おい、ベルトルト」
「何?」
「先行っててくれないか、ちょっと済ませたい事がある」
「わかった」
ライナーは俺が着替えている時、ライナーも着替えながら俺に言った
少しだけ穏やかな気持ちになった
ちょっとでも多く名前と一緒にいられる、それが嬉しかった
ライナーは先にどこかへ行ってしまったので、とりあえず名前と先に行くことにした
寮を出ると、名前はいた。白いスカートをなびかせている
「名前?」
俺は後ろから声をかけた
名前は震えていて、俺の存在に気付くと、俺の手をとって走り出した
見えない小屋の影にきて、彼女は背をもたれ、崩れるように座った
彼女は泣いていた
「え、名前・・・?」
俺も名前の隣に座りこんだ
『わ、私・・ライナーの事が、好き・・・』
「えっ・・・」
わかっていたのに、その言葉は俺の心臓にぶすっと刺さった
『私、ライナーのこと、好きってだけで、一緒にいれるだけで、いいと思ってた』
なのに、なのに・・・とつなげる彼女の瞳から、涙は止まらなかった
『クリスタに、見たことない笑顔で、話しかけてて、私っ・・・』
俺は彼女の手を握り、頭を撫でた
「泣いてて、いいよ・・・」
その言葉は、俺と名前に向けて言った言葉だった
俺も、泣きたかったんだよ、名前
[*prev] [next#]