爪弾いて愛の花(いち)



べんべん。べべん。
三味線の音はゆっくりと空気を動かして、それを聞くのは男共はほぼ全員がへべれけだ。
何故こんな事になったのかと問われれば、原因は昼過ぎに近藤さんが溢した一言に限る。



「いやぁ、そういえば小百合ちゃんの歓迎会ってやってないよなぁ」

そんな言葉に同調した隊士達は、一気に歓迎会の準備を進めた。
発案と会実行が同日とはなんて事だ。その迅速さを仕事に生かせよ。そんな俺の声は平隊士には届かず、あれよあれよという間に歓迎会は始まったのだ。

「小百合ちゃーん!真選組へようこそー!ひゅーひゅー!」と、そんな浮かれた調子で始まった歓迎会は、数分前から酒の飲み過ぎで寝る、脱ぐ、騒ぐ男達の巣窟になっていた。


「おい、小百合」

「んー? なぁに、どーしたのトシちゃん」

「お前、もうそろそろ帰った方がいいんじゃないか?」


こんな場所にいたら、いつ襲われるかわかったもんじゃない。
いや、襲われるって、別に俺は小百合をそんな目で見た事はないけれど、今回急遽呼んだ芸者よりも整った顔をしているし、そもそも女がこんな酔っ払い集団に囲まれてるのがおかしい。そう、おかしい筈だ。
そう思って提案した俺に、小百合は心底嫌そうに顔を歪めた。
皆でご飯!と喜んでいた小百合は、きっとこの状況が楽しくて仕方ないんだろう。


「トシちゃんは、私に帰ってほしいの?」

「そうじゃなくて…もう楽しんだだろ?それに…あー、ほら、万事屋の野郎も心配するだろうし…」


心にもない言葉を口に乗せると、小百合の隣に居た山崎が目を丸くした。恐らく「有り得ない…」とでも思ってるんだろう。
俺は山崎に睨みをきかせて間接的に黙らせた。

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