君が笑う幸福
(幸福で5のお題)
君が、そうやって笑うから。
他の男(ヤツ)に笑うから。
だから、俺は。
君が笑う幸福君の姿を見つけ、俺はいつものように後ろからぎゅうっと抱きしめる。
他の隊士と話をしていたなまえは、困ったように振り向いて、俺の顔を見た。
「いきなりどうしたの、平助?」
「……なまえ、大好きだよ」
その言葉に、恥ずかしがり屋の君は真っ赤になる。なまえと話をしていた隊士は、あからさまに表情を強ばらせてから、微かに頬を赤く染めた。
「ちょ…っ…平助?」
「好き、大好き。……なまえ、ねぇ好きだよ」
「ちょっと…待っ…!んぅっ」
焦ってるなまえを更に抱き寄せて、首筋に顔を埋めた。ちゅう、と吸い付けば、鼻にかかる甘い声が耳に届く。
「やだっ、平助!」
「……ン、嫌なの?」
唇を離せば、首筋には紅い跡が姿を現す。
耳まで真っ赤にしているなまえを抱きしめたまま、俺は目の前に居るさっきまでなまえと話していた隊士を見た。
何処の隊だろ、見た事ないな……。
じっと見つめる俺の視線は、多分睨むに近かった筈。だって、正気の沙汰ではいられない。
顔を赤くしていたその隊士の表情が、一気に堅くなる。
「ねえ…」
「…ハ、ハイっ!」
俺が呼ぶと、そいつは驚いたように返事をした。
まさか話し掛けられると思ってなかったんだろう。
「…話の途中だったかもしれないけど……どっか行ってくれる?」
にこりと、見せたくもない笑みを浮かべて言う。
笑みを浮かべた割には、随分とキツイ言い草だけど、でもそれは、なまえと仲よさ気に話してんのがいけないんだ。
手短に挨拶をして頭を下げたそいつが走り去るのを見ながら、なまえを抱きしめる腕の力を強める。
いつもはスルリと逃げられてしまうから、今回ばかりは逃がしはしないと首筋にもう一度唇を落とした。
「なまえが悪いんだよ」
たじろぐなまえにそう言って、俺は道着の重ねに指を滑り込ませる。
なまえは抵抗したけれど、俺はその力さえ押さえ込んでなまえの肌を撫でた。
「んぁ…だめ…ッ、平助」
「なまえ可愛い……」
「やだ、…は、んぁっ」
首筋に舌を這わせれば、真琴は漏れた声を押さえて唇を噛み締める。
くるりと体を反転させてこちらを向かせると、真琴の眼には羞恥からか涙が滲んでいた。
君の笑顔で幸せになれるのは、俺ひとりでイイんだ。
他の男なんかに、なまえの笑顔を渡したりなんかしたくない。
深く深く口付けて、
もっともっと、君を酔わせて、
俺は君の笑顔を独り占めするんだ。
なまえが、何処かに行かないように。
end
[ 1/20 ][*prev] [next#]
[back]