気付けば甘くて心地よい
(いち)
大和屋鈴から理不尽な依頼を受けたのは、昨日の事。
次の日、即ち今日は、楽そうな小百合の依頼を全て新八に任せ、俺は半日かけて『異世界の姫』の手掛かりを探し歩いた。
しかし、行けども行けども情報はまるっきり無く、俺は手掛かりゼロのまま帰路についた。
かぶき町の情報網を甘く見るなよ!
心の何処かでそう思っていたのが敗因だな、きっと。
そう思いながら、俺は帰宅の途についた。
「どうしましょう銀さん!」
家に入った瞬間、玄関で待ち構えていたらしい新八が俺に詰め寄って叫んだ。
その横で、神楽もヘルスミー!と叫ぶ。
いや、ヘルプな。
そうツッコミを入れると、俺はズカズカと家の中に歩みを進める。
何なんだ、一体。
またゴキブリでも出たのか?
そう思いながらリビングに足を踏み入れた俺は、小さな異変…というか小さな違和感に気が付いた。
「……小百合は?」
「だから大変だって言ってるじゃないですか、この天パ!」
「人の話ぐらいちゃんと聞けヨ、この天パ!」
「いやお前ら天パは関係ないから。」
「うるさい天パ!」
「意味わかんねーんだよ眼鏡!いいから小百合がどうしたのか言ってみろって…」
力ずくで二人を落ち着かせ、一先ずソファーに落ち着く。
けれど落ち着けたのなんかほんの数分で、俺は直ぐさま家を飛び出した。
半ば『拉致された』に近いその説明に、落ち着いてなんかいられるかっつーの。
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