過ごすべき彼方(いち)

  

シロちゃん、トシちゃん、ひじぃ。
候補が沢山あって困っちゃうな。

えへ、と笑って土方さんを見れば、少し困ったように眉間にシワを寄せる。

その瞬間、誰かが部屋に飛び込んできた。


トシ、と叫ぶその人を一言で言うとしたら


野生的なオジサン、だった。





「そうかそうか、君が小百合ちゃんかー!」


説明を聞いた野生的なオジサン、否、近藤勲サンは、にこにこ笑って私の前に胡座をかいた。

近藤さん。
すなわちこの人は、真選組の局長ということだろう。

随分と頼りなさげな優しそうな局長さんだな、と瞬きを数回重ねて近藤さんを見つめた。


(いざとなったら、スゴイのかな)

まぁ、そう思った所で、今はいざという場面じゃないから調べようがないんだけど。


「……んと…じゃあ…、いっちゃん? んー…勲ちゃん?」

「え、何々、何でいきなり可愛い呼び方? どういう事、トシ?」

「…で…、トシ、ちゃん?」

「え、トシも可愛い呼び方なの?」


二人を見ながら言うと、勲ちゃんは楽しそうに私とトシちゃんを交互に見た。
なになに、と笑う勲ちゃんとは裏腹に、トシちゃんの顔は、だんだんと暗くなる。

怒っているのか、眉間のシワは次第に濃くなった。
……ひじぃの方がイイのかな。

(でも勲ちゃんがトシって呼んでるからなぁ)


「どうした、トシ。 可愛いじゃないか、ちゃん付けで呼ばれる経験なんか、そうはないぞ?」

「…だからって、成人過ぎた男がちゃん付けで喜べる訳ねぇだろ……。 俺からしたら、近藤さんが楽しそうなのが不思議だ」

「いやぁ、小百合ちゃん可愛いし、いいかなって」


ニッと、悪戯っ子の様に笑って私を見た勲ちゃんの言葉が嬉しくて、私も思わず顔が緩む。
ありがとー、と微笑んで首を倒せば、勲ちゃんは私の頭を撫でてくれた。
わしゃわしゃと力一杯に撫でるから、髪の毛が乱れて大変な事になってしまった。
うう、待って待って、一回離して。


「っと、ねぇ、勲ちゃん?」

「なんだ?」

「勲ちゃん、何に急いでたの?」


私がそう問うと、勲ちゃんはそうだった、とトシちゃんに目を向けた。

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