過ごすべき彼方(に)

 

捜し者についてなんだが。
そう言って、勲ちゃんは私の頭から手を引っ込める。
そしてトシちゃんの方に身体ごと向き直ると、真剣な面持ちで話しはじめた。


「上から『見付け次第、組の下に置け』っていう言伝を預かったんだ。」

「組の下…っつー事は…隊士として此処に置けって事か?」

「そうは言っていなかったんだが、やっぱりトシもそう思うか…。 どうやら、『居場所』を作ってやれ、って事らしいんだが……。」


勲ちゃんはそこまで言うと、トシちゃんから私に身体を直し、私の両手を掴んだ。
そして真面目な眼差しを注ぐ。



「小百合ちゃん、料理は得意かい?」

「へ?」

「というか、炊事洗濯掃除は出来る?」

「え、っと、あの、んと…う、…え?」

「…近藤さん、小百合が固まってるから開放してやってくれ」


急な質問に狼狽する私に、トシちゃんは浅く息を吐いて勲ちゃんを止めた。

トシちゃんと話してたと思ってたから、すっかり油断していた。そうだよね、私について話してたんだもんね。そりゃ、こっちに飛び火してもおかしくはないよね。

うんうん、と、一人頷く私に、二人はまた話を始める。
今度は油断しないで聞いてなきゃ。



「…近藤さん、もしかして小百合の事雇う気じゃ……」


ん…?
…雇う…?


「だって、隊士以外で組の下って言ったらそれしかないだろー?イイじゃないか、可愛いし。」


……隊士、以外?



「だからって女中として雇うってのは…!」


………じょ、ちゅう?



「女中ー?!」


私がそう声を張り上げると、ごたごたと会話をしていたトシちゃんと勲ちゃんは驚いた様に肩を揺らして私を見た。

しかしそんな事気にしてなんかいられない。だって、女中って!

(あゆ姉とおんなじだー!)



「なぁ小百合ちゃん、よかったら真選組の女中として働いてくれないか?」

てんてこ舞いな私に、勲ちゃんはにこりと笑いそう言った。
よかったら、と言う割には威圧的なその笑顔に、私はただ緩んだ頬を押さえて笑みを浮かべる。


つつしんで、おうけします!

私のその言葉に、勲ちゃんは笑ってトシちゃんはうなだれた。



To be continued.

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