黒と無音(いち)




どんなに晋助様のお気に入りだとしても、やっぱり私は晋助様が誰かの成り代わりで愛されるのは気に食わなかった。

偽りの気持ちで繋がっているのは、とても心もとない。

本物になれば良いのにと、いつからか心の奥で思うようになった。


偽りもいつかは、真実にならないだろうか。


どんなに気に食わなくても、小百合はいい子だ。

間の抜けた性格も、少しテンポの違う会話も、可愛いと思う瞬間はあったのだ。




私にもたれて苦しんでいた小百合は、小さな声で「しんちゃん」と呟いた。
彼女は今、晋助様に会いたがっているのだろう。


ならば、早く部屋に戻らなければならない。
今ここに来ている敵を倒して、早く晋助様に会わせなければ。

そう思った私は、小百合を背負って歩き出した。



「…また子さん、替わってくれませんか…?」

「武市先輩には触らせたくないッス」

「うぅ…」


分かりやすいくらいにがっくりと肩を落とした武市先輩。
とりあえず部屋までは私が小百合を守るしかなさそうだ。

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