心に繋がるは絆なり(いち)



謎だらけだ。

俺も永倉も感じたあの生々しい血の臭いは、決してまやかしではなかった。
けれど、誰かが流したのだろうそれの発信源は、解らず仕舞いだった。

いや、正確には発信源となる血溜まりはあったのだが、怪我をした奴が居なかったのだ。


それ所かあのハゲが言うような電話番のような隊士もおらず、食堂にも道場にも何者も居なかった。


それはまるで、神隠しにでもあったかのように、もぬけの殻だったのだ。




とりあえずこんな屯所に居る意味はないと、そう決めた俺達三人は、バイクで三人乗りで帰る訳にもいかず徒歩で万事屋までの帰路に着いた。

歩きながら、ゆっくりと永倉がここにいる理由を話す。
馬鹿な小百合に説明をするのは難儀な事だったが、最後に永倉が言った「神楽ちゃん達が居なかったら、俺は此処にいないんだヨ」という言葉に何とか理解したらしい。

(…ここまでくると、永倉って凄いな)



「ただい、まぁあっ?!」

「小百合ー!」


家に着くと、神楽が物凄い勢いで小百合に突っ込み抱きしめた。
祭から帰ってきた時もひどく慌てていたのだから、よほど心配だったんだろう。


「無事で良かったアル、私が居たのに小百合が迷子になっちゃってどうしようかと思ったネ」

「ごめんね、神楽ちゃん…」



しゅんとして言った小百合は神楽を抱きしめ返して、ぱっと身体を離した。
でも有難う、とふんわり笑う。


「心配してくれた事も、新ちゃんを万事屋に連れて来てくれた事も…どっちも有難う」

「そんなの、どって事ないネ。やれる事をしたまでヨ! それより早く中で休むヨロシ、今新八がお茶入れるアル」

「あ、そうだね。 今お茶の用意するから、皆 中で待ってて下さい」


バタバタとする万事屋の玄関先で、永倉はぽかんとしていた。
そんな永倉とはしゃぐ小百合の背を押して、俺は部屋の中へ歩みを進める。


その足で居間のソファーにどかりと座り、永倉と小百合も向かい合うように腰掛けた。

さあ、今日祭で神楽と別れてからあった事を話してもらおうか。そう話し出して、俺は小百合を見つめた。

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