心に繋がるは絆なり(に)


「──それから…小百合、トシちゃんと総ちゃんと一緒に車で屯所に帰ってきたのまでは覚えてんだけどー……」


祭で楽しかった事や、神楽がマダオの店を潰しかけた事、それから誰かの『声』に呼ばれて向かった先に黒猫と高杉が居た事をゆっくりと話す小百合。
それから?と訊ねれば、そう答えて唸り始めた。


「小百合、寝ちゃったんだよねぇ」


むぅ、と唸りながら首を傾げる小百合は、身体を傾けすぎて隣に居た永倉の肩にもたれ掛かった。
そのままぴったりくっついて、また唸る。

どうやら本気で考えてはいるようだが、いかんせん態度が態度だ。
それを見ている俺は、イライラとしながら新八の入れたお茶を飲み干す。

どうぞ、と永倉達にもお茶を出す新八も、ちょっと顔が引き攣っていた。

祭会場であった事は、大体が山崎が話した事と同じだった。
ならばそれ以降の情報が必要なのである。


「パトカーで帰ったんだろ? 何でお前だけあの部屋で寝てたんだよ」


「そんなの、私がききたいよぅ。 トシちゃんと総ちゃん何処行っちゃったのかな…」


心配だと呟き、小百合と永倉も新八の入れたお茶で喉を潤す。
しかも最後に見た物はなんだと訊ねれば、トシちゃんの膝とか吐かしやがった。



「膝枕してもらったってか」

「うん。でも小百合、新ちゃんに膝枕してもらう方が好きー」

「小百合、そういうのは恥ずかしいから今言わなくていいヨ」



真面目に訊ねたのに、小百合はへらっと笑ってそう答える。
ああもう、こいつと真面目な会話が出来ない事ぐらい解ってたろうに、何故か腹が立つ。
永倉も永倉で、こんな状況に慣れているのかにこりと笑った。



しかし永倉の表情は、すぐに真面目な面持ちに戻る。
永倉自身はまともな会話が出来る人間だという事だろう。


「そういえば、神楽ちゃん達は何か掴んだノ?」

「おぉ、そうだったアル!」


でかしたヨちっさい新八!と鼻息荒く言い出した神楽は、俺が座っていたソファーの背もたれに身を乗り出した。


「銀ちゃん、定春がなんかに邪魔されて小百合の匂い追い掛けられなかったアル。」

「なんかに…?」

「前に嗅いだ事があるって、そう言ってたネ。 危険だって」


キケン。
その言葉に、ぞわぞわと背中の中心をはいずり回られるような不快感に駆られた。


「そうか」

「だからネ、さっき小百合が言ったように、この前の高杉って奴らが関係してるはずアル」

「……はず、ねぇ。 残念ながら、筈じゃないぜ神楽、新八。」

「え? まさか銀さん、高杉さん達に会ったんじゃ…」

「その、まさかだよ。 ま、正確には高杉ン所の金髪女とおっさんなんだけどよ。」


やべぇよなー、なんておちゃらけて言えば、神楽と新八は顔を強張らせた。
その緊張が伝わったのか、永倉だけでなく小百合もぎゅっと身を縮こませる。


「高杉、か」



ぽつりと呟いた俺の声は皆の耳に届いただろう。
小百合を取り戻せたとはいえ、それを取り巻く問題を解決出来た訳ではない。そうなれば俺がやるべき事はひとつしかないのだ。

(何とかして、鈴とコンタクトをとらねぇとな…)



溜め息を吐いて頭(かぶり)を振る俺。
やる事は山積みだ。


「まぁ、とりあえず…新八」

「は、はい、『とりあえず』何ですか?」


「飯だ、飯」

「そうヨおっきい新八、私お腹空いたネ」


腹が減っては戦は出来ぬ。
そう心の中で思って、俺は台所へ向かった新八を見送った。



To be continued.


ちっさい新八は永倉さんで、おっきい新八は志村さん。
ずっと逆で明記してましたが、加筆の際に直しました…。


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