色々な始まりの(に)

 

「そういえばお前、『京都から来た』って呟いてなかったか?」

「ん…ん?そんな事言ったっけ? でも小百合、京都から出た事なかったから……うん」



だったら話は早い。
明日にでも京都の地図買ってきて大体の家の場所探してやろう。
そう結論付けて、俺は息を吐いた。


「よっし。じゃあ今日の調査は終わり!っつーコトでなんか甘いモンでも食って……」

「あまいものっ?!」


俺の言葉に、パァッと花が飛ぶような笑顔を見せる小百合。

あ、花っつったってちゃんとしたヤツじゃねぇぞ。
アレだアレ、ギャグ漫画みたいな花びら5枚のヤツな。ガキが描くようなヤツ。


「銀ちゃん、小百合おまんじゅう食べたいな!」

「あー?なんでまんじゅうなんか…。仕事上がりは苺牛乳って決まってんだろ」

「おまんじゅうがいいのっ!おまんじゅうっ、おまんじゅうっ」



……こいつは、人の話を聞く気はないらしい。
勝手にまんじゅうコールを始めてしまった小百合を止められそうもなく、俺は仕方なくまんじゅうを探しに台所に向かった。

まんじゅうなんか有ったか?
つか有ってもカビ生えてそうな気がする。

……生えててもそんまま出してやろう、腹いせに。


俺の中の悪魔な銀さんとそう相談していると、それを遮るように玄関のインターホンが軽やかに鳴った。



「ハイハイ、どなた様ー?」

すっかり休憩モードの俺は、けだるいままドアを開ける。
するとそこに居たのは、


「にゃー」

猫、だった。

いや、正確には、猫のような小さな子供。が、二人。
双子なのか、殆ど同じ顔で殆ど同じ真っ黒い服装をしている。

それはもう、まるで、イイトコのお屋敷に飾ってありそうな綺麗な人形みたいな子供だ。
はっきり言って可愛い。っつっても、俺にお稚児趣味がある訳ではない。そりゃそうだ。


「にゃー」

「…は、何?君ら迷子?」

「……にゃー」


もはやそれしか言わない不思議な子供らを見ていて、すっかり周りを見ていなかった俺は、そいつらの後ろにもうひとり居る事に気付かなかった。

もうひとり、と言っても、こいつらみたいな小さな子供じゃない。
もっと大人の、またもやこの小さな子供と同じく真っ黒い服に身を包んだ、妖艶な……男?

浅黒い肌に、白銀に近い銀髪。
この辺りじゃ見ない顔だ。

俺が見つめていると、そいつは口を開いた。


「こちらのご主人…ですか?」

「あ…、…あぁ、そうだけど」

「そう…、では万事屋の貴方に頼んでみたい事がありまして。」


にこりと笑うその男は、まさに『華のある』と称するに相応しい。
小百合なんかメじゃない、足元にも及ばないという感じすらした。


華がある。

だが、何処か引っ掛かるのは、こいつの笑みの妖艶さからだろうか。

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