07


 ぬちゃぬちゃと腹の中でするはずのない音が響いて来るのが嫌でも分かる。


「はふっ…はッぁっ、ァんっ…ぁっ、ぅんっ…!」
「ッ、だから、エロい声出すな…」
「っぁっぁっぁっぁっ…ッ、ま、っ…、ッん゙っん…ッ」


 互いの汗が更に滲んで密着度が増し、肉のぶつかり合う音が強くなる。

 大の大人がふたり。もちろんベッドは軋み、麻倉の手錠の鎖は鳴り続け、溢れ出したローションがねちゃねちゃと互いの間に糸を引き、シーツの衣擦れが耳から脳を震わせる。


「ッま、て…っゃ、ぁ…っ、は…ぅん…っ!」

 ぐちゅっ、ばちゅッ、ばちゅっ!

「んぁ…ッァ、ッ! まっ、ァ…っ、んっ…んゥ…っ、ッ──!」
「っぐ、…っ」


 ぎりぎりと枕を握り締める。なにかが迫り上げて膨らんで、目の前が弾けた。

 圧し掛かる木築が呻いて、激しいピストンが一旦止まった。

 なのに呼吸に応じてどうしても躯がうねり、ぬちゅぬちゅと粘着質な音を立てながら、麻倉の躯自身が木築の太く硬い牡を愛撫してしまう。

 そのカタチをありありと躯の奥で確かめているような感覚に陥って、眩暈がする。


「は…。なんだ…、突っ込まれてイったのか」
「ぁ…っは、は…っ、? ぁ…?」


 さっきの感覚が、絶頂…? 恐る恐る触れられもしなかった性器を見る。だが、麻倉の性器はまだ勃起したままで、腹にもシーツにも白濁は散っていなかった。

 愛液は大量に漏れ散り、てらてらと卑猥に光っていたが。


「ぇ…?」

「まあ初めてだよな。ドライだよ。女のイき方だ。今も躯きちィだろ」

「んぁっ!? っは、ぅんッ…っ!」


 指先で掠めるように触れられるだけでぞわぞわと全身が震え上がり、蕾に穿たれたままの牡を肉襞がねぶってしまう。それだけでちかちかとまた視界が明滅した。

 木築に言われた台詞も、飲み込み理解をする余裕さえない。


「んゥ…っはッ…ぁ、ぬ、けぇ…」
「馬鹿言え、俺ァまだ満足してねェんだよ」
「っぇ、ぁんっ…!」


 強く腰を打ち付けられると自分でも驚くほど高い嬌声が上がって、咄嗟に左手で口を押さえる。

 木築は口角を上げると、ピストンを速めた。


「はッぁっあっあんっ…っま、待ッ…!」


 しかもそれだけではなく、麻倉の右足を跨いでいる体勢のまま何度も突き上げる角度を変えて。


「ひぅっ!? ひぁっ…! はッ、ぁっゃぁ…ッ!」

 濡れた水音が迸る。ぬちゃぬちゃ、ずちゅずちゅ。


 まず木築の性器の太さに拡げられた肉壁を、故意的に抉り嬲られる事で腰の中にくすぐったいような、熱く痺れるような刺激が暴れ回る。


「ぁっぁっ…ッぁんっ…! まっ、んッんぅ…ッッ!」


 賢者タイムも訪れないまま、あっという間にさっきの感覚…頭が真っ白に染まるほどの絶頂が襲って来た。

 息が出来ているのかも分からないのに、木築は全く速度を落とさない。

「まッ…はッ、ッ、ま、っひっ」
「は…、」


 蕾がひっきりなしにキュウキュウ締めつけ、肉壁が痙攣し続けているので、麻倉が絶頂し続けている事に木築はもちろん気付いている。とんでもない圧が掛かっているのだ、気付かないはずがない。


 だが止められなかった。


 元より相手が絶頂している際に責め抜くのを好む性癖ではあるが。

 それ以上に喘ぎ泣きながら繰り返す絶頂から逃げようと腰を悶えさせ、だが木築の身体に押さえ込まれて啼くしか出来なくなっている麻倉が、…可愛くて仕方なかった。

 野獣が獲物をいたぶり殺すのに似ていた。

 永遠に苛みたい欲に支配される。




「先輩!」




 扉を叩き、ノブを回す音。

「!」
 きゅんッ、と蕾がまた牡を搾った。

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