治して、先生。

02




「ッぁ…っ、ぁ、ぁんッ…」


 ただそれだけなのに、ぴりぴりと躯に痺れるような感覚があって、弱々しい声が唇からこぼれた。

 ぞくぞくと下腹の奥になにかがわだかまって、「っ? …っ?」吐息が乱れる。


「やっぱり。ここの肉芽がね、君の躯に悪さをしてるみたいなんだ」


 ワゴンから取り上げたピンセットで霜月がシャツをめくり、硬くしこった修右のそこを抓んだ。

「ゃ、っイタっ…せ、せんせ、そこ、ッちくび…っ」

 冷たくて硬くて、滑り止めでギザギザしているピンセットが器用に何度も根元から抓み伸ばすみたいに引っ張る。ただ痛いはずなのに、股間が疼くのを修右は確かに感じていた。


「そう、乳首。でも普通、こんな反応するはずがないんだよ。ここになにか良くないものがあるはずなんだ」
「っよ、くな…っ? あッあッ…!」


 何度も乳頭が引っ張られて、挟み潰されて、何故かじんじんと性器に熱が溜まっていく。

 確かにこれまで乳首なんかで感じた事などなかったから、霜月の言葉を有り得ないとは思いながらも少しだけ、修右も自分の躯を疑ってしまった。

「っど、したら、いぃ、の…っせんせ…」
 突然の感覚にまともな思考が追いつかない。

 ピンセットに乳首を抓まれながら赤い頬で涙を浮かべて見上げて来る少年に、霜月は見えないようにほくそ笑んで、聴診器を少年の胸に滑らせた。


「ちょっとシャツを上げて。確認させてね」


 拘束された病院の白いベッドの上で、自らシャツをたくし上げて勃起した乳首を晒す姿は、何度見ても良いものだった。

 患者たちはいつも、食事などに混ぜ込まれた催淫剤で狂った躯を、医者の戯言ひとつで簡単に肉体的な病変だと思い込む。

 僅かには疑いながらも結局自分から淫らな躯を差し出し、霜月の『診察』や『治療』に悶え、喘ぎ、蕩ける姿が堪らなく征服欲を満たしてくれる。


「息を止めず、ゆーっくり呼吸してね…」
「は、ぃ…、ッんっ…んゥっ…ッあんッ」


 懸命に落ち着いた呼吸をしようにも、チェストピースが乳首を掠め、あるいは押し潰したり、わざととしか思えない速さでぷるぷるぷるッ、と乳頭を弾くから、修右はまともに息もできない。


「っせ、せんせっ…、」

 やめて、と荒い息の下から涙声で訴え、遂に修右は霜月の手を掴んだ。霜月は困ったように肩を竦めて見せる。


「痛いかい?」
「っぃ、痛くはない、けど…、じんじん、する…」

「井之崎君の躯が動いちゃうから、まだしっかり確認はできてないけど…やっぱり普段より鼓動が早いね。呼吸も安定しないし…処置しようか」


 霜月が次にワゴンから取り出したのは、親指ほどの大きさの透明のカップがふたつと、ゴムチューブ付きのシリンジだ。カップの縁の部分は黒いゴムで保護されている。もちろん修右はそんなもの見た事もなく、なにに使うものかも分からない。


「…は…っ、注、射、…?」
「いいや。これは悪いものを吸い出す器具で、検査と処置を一度にできるものだよ」


 霜月は普段通りの口調で、ただのアダルトグッズをあたかも医療機器であるかのように説明する。

 上気したままの頬で、少年は無垢な目で霜月の手にある調教グッズを見つめた。


「吸い、出す…」

「そう。ちょっとだけ痛いかもしれないけど、できる限り調整するからね」



- 292 -
[*前] | [次#]

『雑多状況』目次へ / 品書へ


 
 
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -