キスペット。

05


 けれど、知己は海晴の頭を優しく撫でた。

「気持ち良いなら嬉しいけど。男相手なんて嫌だと言うなら、強要して悪かったね」
「っ違います! ぁ、ぁの、ほんと、気持ち良くなり過ぎちゃって…その…こ、こんなの、初めて、で…」

 語尾は小さくなって消える。視線を落とせば、熱くなり始めた股間がほんのり膨らんでいて、情けない。

 他人は元より、自分になんて興味なかったのに、どうでも良いと投げ出した自分を拾って暴かれたような気がして、恥ずかしくなった。

 知己の視線が、「…ああ」と海晴の股間に落ちる。その零された呟きに、かああっと身体が蒸発しそうなくらい、熱くなった。恥ずかしい。消えてしまいたい。
 大きな手が、頬に添えられる。



「…キスしようか、ハル君」



 ちゅ、と触れるだけのキスが、唇に落とされる。
 それから、また、深く。海晴も懸命に受け入れ、舌を絡めて応じようとする。
 けれど。

 ぷつ、ぷつ…

「…ん、ぁ…?」

 じぃいいい…っ

「っあ!? ぁ、む、っん、と、知己さ…っ」

 ツナギのジッパーが、下ろされている。気付いた海晴が慌ててその腕を掴むと、彼はにっこり微笑んだ。

「ぅん?」
「き、キスだけです、俺達が提供するのは」
「そうだね。でもずっとこのままはツラいだろ? 俺の部屋から勃起したままの宅配員が出ていくところ見られたりしたら困るし…大丈夫、キスしかしないから」

 股間をすりすりと撫でられると、確かに熱く張り詰めたそれがまざまざと感じられて、言い訳できなくなる。

 ツナギを脱がされ下着ごとパンツをズラされると、恥ずかしい屹立がぷるんと勢いよく飛び出した。しにたい。

「ふ。かわいい」
「っみ、見ないで…」
「そういう訳にはいかない、かな」

 柔らかく微笑んだ知己が、自ら座っていたひとり用のソファに海晴の躯を沈める。そして赤くなって震えている屹立へ、

「ゃっ嘘ッ!? だ、だめです知己さん! ほ、ほんと俺達、キスだけ」
「キスしかしないよ」

 ちゅっ。

「ッん、ゥ…!」

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…

 ひとり用のソファで股を開かされ、床にひざまずく男の前へ晒した股間の屹立に、恭しく何度も何度も、愛しげにキスされる。

「〜〜っ!」

 唇が触れるたびビクンビクンと震える屹立が、与えられる口付けに比べると、なんとも俗っぽくはしたなく感じられる。

 もどかしい愛撫。物足りない快感。


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