踏み込んだ泥沼

02


 だが、この仕事には難点があって。
 つまり、俺が満足できるようなネコが、そうそう現れないということだ。

 一生懸命声を殺して、牡だという矜持を捨てきれないで、ア○ルにペ○スぶちこまれてガマン汁垂れ流して、結局何度もイきまくるような、そんなネコがいない。

「ま、贅沢は言うまいよ…」
「え?」

 目を丸くするネコに手を振って、俺はそのまま帰路に着く。処理までしてやるつもりはない。

 公園から家まで、ひと駅程度。
 あんまり近くの公園でヤって、近所にバレたりネコにストーカーされるのはさすがに勘弁だ。

 ぶらぶらとひと気のない細道を歩きながら、帰ったらもう一度ヌこうか、なんて考えていたとき。不意に、道の先に細っこい男が歩いてくるのが見えた。

(顔は好みなんだけどな)

 そんなことを考えながらすれ違おうとした途端、その男がいきなり俺の腕を掴んだ。驚く俺の耳に唇を寄せて、そいつは囁く。

「あの…公園で、いつも、その…してくれるっていう、レオさん、ですよね?」

 俺のハンドルネーム。

 つまりこいつも、ネコだってわけだ。
 思わずにやりとしてしまった俺に少し気まずげに視線を逸らしながら、そいつは続ける。

「あの…その、お疲れですか…? 良かったら、その」
「いいぜ、ついてってやるよ」

 あっさり即答すると、そいつはぱっと顔を輝かせ、それから「こっちです」と俺の手を引っ張って歩き始めた。




 着いたのは、普通のマンション。2階の端の部屋。
 警戒心もなく入った俺は――中に既に3人の男がいて、硬直した。

 ガタイのいいおっさんと、大学生風の優男と、眼鏡のリーマン。振り返ると、細っこい男はにこりと笑った。

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