StP 2nd

02


 返す言葉もない。首から上が、あまりの熱さに蒸発してしまったかのようだ。

「そーいや最近、女が絶えてるな、夏弥」
「、つ、つまんねー奴だってバレたかな」

 乾いた笑いで無理にごまかす。

 前までは同校であれ他校であれ構ってくれる女子に不自由はなかったが、いかんせん、博愛主義の裏返しは八方美人、夏弥はいつでも本気になれない。

 夏弥が告白されてはフられることを繰り返す内に、彼女達も学んだらしい。友人の指摘通り、『男』をしていなくて久しい。

「しっかたねえなあ! じゃあ俺様がひと肌脱いでやらあ!」
「えっ?!」

 一瞬、不自然なほど躯を強張らせた夏弥だったが、すぐにそれはありえないと思い直しては頭を振った。

 それ――文字通り、脱いだ友人が、夏弥の欲求不満を晴らしてくれることなど、あるはずがない。

 判り切ったことなのに、一瞬、小指の爪の先ほどでも、期待、してしまったことに、激しく自己嫌悪する。
 さすがにそんな心境までは読めるはずもなく、友人は嬉しそうな顔で夏弥の肩を抱いた。

「海行こうぜ、海! ナンパ! 遊ぼうぜ!」
「…それ、お前が行きたいだけじゃ、」
「いやいや、欲求不満な夏弥ちゃんの為の企画デスヨ?」
「もう言うな、それ!」

 そうこうする内にそれぞれのゼミ室へと到着する。

「また詳細はメールするわ」

 悪戯っぽく笑った友人と、そこで別れた。


***


 予定時間を軽くオーバーしたゼミを終え、部屋を出た夏弥がケータイを開くと未読メールが1通あった。

「お?」

 早いな、なんて思いながら開こうとした夏弥の手が止まる。


 差出人、栗山洋介。


 ぞくりと肌が粟立つ。

『可愛い夏弥が欲求不満で海なんかに行くと聞いたので、そんな気が起こらなくなるまで僕が相手をしてあげるよ。いい場所を用意したから、体育館前に来てね。
 おうちに帰ったら、おうちでいっぱいシたいってことだと思うから、たくさんオクスリ用意してお邪魔するね』


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