StP 2nd

01


 蝉の声が騒がしい。
 うだるような暑さに心底辟易しながら、夏弥は大学ヘ向かう。

「夏休みってのはさぁ、暑過ぎて頭動かなくて集中できないから休んでしまいましょう、って文科省が決めたんじゃないのかよ」

 学舎の前で顔を合わせるなり、友人がげんなりした様子でぼやいた。

「なにが悲しくてゼミなんかの為に学校来なきゃいけねーんだよ」
 楽しむ為の夏休みだろ! と、舌の根も乾かぬ内に友人は本音を漏らした。

 夏弥はただ苦笑する。暑さには閉口するが、こうした正当な理由で外出し、誰かといられるという状況は、夏弥にはありがたかったから。

 夏弥は半年以上前からストーカーに遭っている。
 そして少し前から、手紙だけだった被害が、激的にエスカレートした。

 クスリを使われて、犯される。

 もはや合鍵を作られた自宅は、安息の地ではなくなった。
 チェーンロックは奴によって取り外されてしまった。以前、それを買い直して付けたとき、外出しようとした瞬間を襲われて、立ち上がることすら困難になるくらい犯されたことを考えると、新しく買うのも恐い。

 更に恐ろしいことに。


「…ん…っ」


 じくり、と躯の奥が疼く。

 肩を震わせて俯いた夏弥の顔を、驚いたような表情で友人が覗き込んでくる。

「大丈夫か?」
「う、うん? な、なにもねぇよ?」

 言えるものか。躯だけはすっかり開発されてしまって、時折ナカを激しく擦られることや、深奥に他者の体温を求めてしまう、なんて。そんなこと、夏弥自身、認めたくない。

「なに、最近欲求不満ですか、夏弥ちゃんは」
「っ?!」

 図星すぎて、ごまかす暇もなく顔が真っ赤になる、夏弥。
 友人はにたりと笑った。

「へっへ、当たりか。お前最近、時々だけどすっげぇエロいカオしてんのよ」
「っ!!」


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