ヒトガキ

02



「ン…ぅ」

 耳朶を食まれながら、囁かれる。その感覚に、否応なしに2週間前の悪夢が甦る。

「ゥ…、ぅ…っ」

 頭を振っても、止むはずのない行為。男の手が、股間に触れた。
 鞄を脚の間に置いた所為で軽く開いた股間は、格好の的になってしまったようだ。
 揉むように股間をいじられる。かあぁ、と体温が上がる。

「こないだはありがとう。君の反応が可愛くてね。病み付きになってしまったみたいで」

 耳許で囁きながら、ジッパーを下ろされる。夕樹には、車輪の音が妙にうるさく聞こえたが、そんなささやかな逃避は、下着越しにペ○スを撫でられて吹き飛んだ。

(いやだ…!)

 また電車の中で脱がされる。下半身を弄ばれてしまう。

「ぅ、ッ…!」
「そう言えば」

 抵抗しようと腕を動かした途端、顎を掴まれ、背後から首筋をねっとりと舐められた。

「――ッ!」
「あのあと、どうしたのかな?」

 くすくすと嗤う、痴漢。夕樹は一気にあの屈辱を想起してしまった。
 かあああ、と耳まで真っ赤になる。

「コックリングは初めてだろう? 勃起した状態じゃ、なかなか外れなかったはずだ。トイレでビンビンのち○ぽを持て余したんじゃないかな? リングしたまま何度かイッたかい?」
「〜っ!」

 耳を塞ぎたくなるような男の言葉に耐え切れず、夕樹は必死に頭を振る。
 これだけ派手に動けば、誰か気付いてくれるはず。そう思った。

 だが。


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