キズナ 01 ――あ…、…始まった…。 茜はベッドの上に登り、壁に耳を寄せる。 ほんの僅かな、ベッドの軋む音。時折壁に腕が当たる。 そして紛れる、かすかな、本当にかすかな、一卵性双生児である兄・葵の、熱い吐息。 『ン……は…、…ん…っ』 茜と葵の部屋は、壁を挟んでほぼ左右対象になっている。 その壁を挟んでベッドを並べているから、こうしてお互いがベッドの上で何かすると、薄い壁は大体のことを筒抜けにしてしまう。 そう、ナニか。 すぐにズボンも下着も脱ぎ捨てて、茜は壁に背中をつけて自らの性器を握った。 「っ…」 それは既に半勃ちで、夢中で壁の向こうの葵を想いながら、声を殺し、自慰に耽った。 葵は知らないだろう。 自慰する葵をオカズに、片割れである茜が自慰をしているなんて。 気付かれないように、日々の暮らしでも茜は常に気をつけている。大きい音は立てない。友人も部屋には呼ばない。 一応は、茜にもそれなりの自制心はある。 この想いが許されないものであると、重々に承知している。 だから、この秘め事は。 絶対に、バレてはいけない。 『ん…っ、…く、ぅん…ッ』 ――葵…ッ、葵、あおいっ…! [*前] | [次#] 『雑多状況』目次へ / 品書へ |