お父さんといっしょ

06


 赤ん坊がトランクスの中に手を突っ込んでいる状況というのは、改めて見ると卑猥でも滑稽でもなく、ただただ異常だった。
 抱き上げようと再び太一の脇に手を差し入れる。すると太一は、んぎゅう、と怜の牡を握り込んだ。

「あぅッ…!」

 赤ん坊の力だけあって痛みはないが、だからこそ加減がなんとも言えない。
 かああ、と顔が熱くなるのを感じながら、とにかく怜は太一を抱き上げた。

「こ、こら太一!」

 手はあっさりと離れたが、何故怒られるか理解出来ないらしい太一は、きょとんとしたあと、ふにゃっと顔を歪ませた。

「ぅあ…あぁああ〜」
「あっわっわっわっ! 太一、あのな、ヘンなトコ触っちゃめぇよってことだからな? 太一が嫌いなんじゃないからなっ?」

 慌ててフォローするが、太一には届かない。
 ひとりでわたわたした挙句、怜はまた太一を抱いて揺らしながら背を叩いてやる。

「あーほら、よしよし」


(こりゃ大変だ…)


 みどりが帰ってきたらもっと子育てを労ってやろうと決意する。
 太一を抱え直し、なにかおもちゃでもないかと視線を巡らせた。

「あ〜…きゃーあっ」
「へっ? ゎんッ!」

 突然機嫌を直した太一を見る。その途中でビクリと肩が震えた。

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