What is...?

02


 クロウ・ガルドはそれなりに名の売れたハンターである。
 吸血鬼を狩るのは彼にとっての生業であり、そこに特に怨恨はなく、だからこそ吸血鬼に飼われ犯され続けている生活は屈辱だった。

「クソ…」

 目覚めればいつも夕刻。部屋にはいつの間にか簡素な食事が用意されており、大抵腰の痛みで動きは鈍い。

 飼われて分かったことと言えば恐らく吸血鬼の性欲は無尽蔵で、所謂精液が枯れることもなく、ついでにそれはナカ出しされても腹痛を催さないという、果てしなく知りたくもない事実だけだ。
 躯に染み込むのかなんなのか、注がれると感度が上がり、血の従属とやらの効果が強まる気さえする。
 だから色んな意味でナカ出しは拒否したいが、今のところ拒否できたことはない。

 もそもそと食事を摂りつつ、考える。このままで良いとは思わない。
 満月。その日なら、ワイズの力は弱まるはず。
 その日の脱走に向けて、クロウはじわじわと準備を整えた。



 結論から述べると、その計画は失敗した。
 食事係の老人にハンター仲間への符丁を忍ばせ、満月の夜に数を恃んで襲い掛かってなお、ワイズは倒せなかった。
 敗因を挙げるならただひとつ。
 クロウは理解していなかった。
 恋という名の何ものにも代え難い論理を超えた執着を。



 全てのハンターを叩きのめした後、ワイズはクロウの服を掴んで引きずり倒し、思い切りその首筋に牙を立てた。

「がッ! ぐ、ぅ…!」

 いつもよりも数倍乱暴に。痛みも桁違いだ。
 溢れ出した鮮血を、ぢゅるぢゅるぢゅるッ、と音を立てて飲む。その姿を、伏したハンター達の前で見せつけた。

 人間達は吸血鬼に血を吸われると同じく吸血鬼になると信じている。やられた。クロウは思う。これでクロウは吸血鬼であり、これから彼が助けを求めても動くハンターはいないだろう。


「…口付けしろ、クロウ」
「っ、く…!」


 徹底したことに、血に命じられると躯が勝手に動いてしまう。
 冷え切った低い声音に応じて、組み敷かれていた躯がそろそろと動く。抵抗も意味がない。
 仲間達の前で、クロウはワイズへと腕を絡め、唇を寄せた。

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