淫妖奇譚

08



「いいぞ、いいぞ双葉…っ!」

 キュウキュウと締め付ける菊座に犬神は深くまで突き入れ、そして奥まで欲を放った。
 大量の液体が体内に注がれる感触に、双葉は唇を噛み締めて耐えた。

 ずる、と熱いモノがようやく抜かれ、開かされた菊座がヒクつく。

「んは…はぁ…っは、ふッ…」

 腿を震わせ、余韻に泣く双葉に、そぅ、と犬神が寄り添う。

「祓いは効いた。最早この家に、あの女に、なんの興味もない」

 犬神の言葉に、尻だけ突き出すような恰好のまま、双葉は顔を横に向けて犬神を見た。
 丸い黒の目がギラギラとした、どう見ても茶色の毛並みの、狗だ。

 双葉の顔は涙と涎でぐちゃぐちゃだが、それでも僅かに理性が戻る。

「…っ、では、あや、さんから、は…」
「うむ、離れよう。そしてお前の魂に住まうぞ、双葉」
「――は?」

 さらりと言われた台詞に、双葉は愕然とする。

「ちょ、…え? 待っ、」
「陰陽師として私を使役しろ。言うのもなんだが、私の力は大きい。役に立つことも多かろうし、陰陽師としても箔がつくぞ」

 激しく犯した後だというのに平然としている犬神に、混乱した頭で双葉は必死に考える。
 確かに使役すれば良いことだらけに聞こえる。が。

「で、も」
「何、報酬はお前の躯だ。いいな、双葉」
「ちょっ!」

 双葉が応じる前に、犬神はずるりと双葉の胸に飛び込み、消えた。

 茫然とする双葉に、あやがそっと着物を掛けてくれた。

「ありがとうございました、桂さま。――お幸せに」



end.

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