君が判りません・中篇

01


 激しい腰の痛みで目が覚めた。寝返りを打とうとして、躯が悲鳴を上げたらしい。
 涙の浮いた目でぼんやりと辺りを見渡す。どれも馴染みのないものばかりだ。

 どこだ、と思った瞬間に、思い出した。

 昨日、学校の帰りに後藤の家に来て。後藤の部屋で、散々に犯された。
 何度も意識を失い、それでも後藤はどうやら俺を犯し続け、目が覚めてはまた失神することを繰り返した。

 気が狂いそうだった。狂いそうなほど――感じて、しまった。
 動機は勘違いだし、荒々しく性急な行為だったが、それでも。

 ああ、こいつはこんなにも俺のことが好きなんだ、なんて。

 ベッドでの行為だったこともあって、俺はそんな風に感じてもいた。


「あ、先生、起きたんだ?」

 かちゃりとドアを開けて、後藤が入って来る。ドアの前、ベッドの正面に、三脚に固定されたビデオカメラがあることに俺は初めて気付いた。

「おはよ、先生」
「ぉ、おは、よう…え、って、もしかして…もう朝っ…?」

 声はすっかり掠れてしまっている。後藤は晴れやかに笑った。
 さ、とカーテンを開く。

「そうだよ?」

 窓の外は、眩しいくらいの太陽。朝も早い時間ではないことが、よく判った。
 と、言うことは。思い至って、俺は蒼白になる。

「お、俺っ、後藤の家に」
「うん、お泊りしたね」
「ッ! ご、ご両親っ…ぁぐっ!」
「ああほら、無理しないで。安心してよ。俺、ひとりだから」

 突然動いた所為で走った激痛に声を失う俺を気遣いながら、後藤はあっさりと言った。あまりに普通に言うので、言われたことが一瞬理解出来なかった。

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