もう耐えられません

06




「そう言う時に便利なのが、やっぱ『好意を寄せる他人』てヤツなんだよね。なので先生は完全にただの人質です巻き込みごめーんね?」


 ひとつも反省なんてしていない顔で、後藤の兄は顔の前で掌を合わせた。

「大丈夫大丈夫。痛いことはしないし。むしろ気持ちヨくなってもらうし。つーかアイツのプレイ以上に酷いことは俺知識ねぇからできねぇし」
「……は?」

 彼の言葉が理解できず問い返す俺に、とん、と足元に置いてあった鞄を彼はソファと椅子の間にあるローテーブルに乗せた。
 開けると、4本の注射器が入っていた。本物じゃない。大きくて針は太くて短いプラスチックで、中身は白濁した桃色の液体。

「先生、脅されてんのに脅す方法知らねぇの? 服従させる脅迫はね、相手が1番嫌がることを1回やってみせんの。で、1回されたって事実を叩きつけてから、次はもっと酷いことすんぞーって、そういうのが単純チープだけど効果的」

 まあこれ、相手との間に確実な力関係がないと無理だけどね。なんて。

 最低なことを淡々と話しながらオモチャみたいな注射器を一本取り上げて、後藤の兄はまじまじとそれを眺める。普段は手にすることもない、という雰囲気だ。
 そして、レロぉ、とキャップしたままの先端を舐めて、彼は笑う。

「アイツが1番嫌がんのはあんたを他人にとられることだし、その『他人』が『俺』なら更に最ッ高に最ッ低な気分になると思うからさ」

 悪ィけど付き合ってね?


   §
 

「ぅ…ッ、んく…」

「んー? なーコレ超即効性で強力、って話じゃなかった?」

 俺の服は「あとで弁償するから」と軽いノリで後藤の兄に言われ、屈強な男達に切り裂かれ、端切れがあちこちに残っているだけの状態にされて。

 後藤の兄が手元のリモコンを操作すると、縛り付けられた椅子が動いて、俺は大きく股を開き、股間を晒すような格好に固定されてしまった。

 その無防備なア○ルに、既に2本分、注射器の内容物を注入されている。
 後藤の兄曰く、『メスになるクスリ』、だそうだ。

 実際、理性なんか吹き飛びそうにナカが熱くて痒くて堪らないし、性器もガチガチに勃起させられている。

 そしてその姿を──録画されている。

「アイツに連絡が着くまでね。着いたらちゃんとアイツに生配信してあげるから」
 にっこりと後藤の兄はそう言っていた。

 兄に問われた男のひとりは「そのはずですし、実際よく効いていると思いますが」と答えて、後藤の兄はその男の腹を鋭く蹴りつけた。ごく当たり前に。

「効いてねぇって俺が感じてるから聞いてんだよ脳味噌ねぇの?」

 非情な声音だった。冷え切った、という表現しかできないほどの。

「ねーせんせ、まだ足んねぇ?」
「ンッ…く、ぅ…」

 ちゅこ、ちゅこっ、と愛液で濡れそぼった俺の性器を手遊びのように扱いて、一転甘えるような声で彼は俺の顔を覗き込む。

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