不協和音 01 「あの、先輩が好きですっ…! 付き合ってもらえませんか…!」 「『もらう』だなんて…。俺なんかで良ければ、…お願いします」 それは、早朝の音楽室でのこと。 昼休みに、がっしと友人に肩を抱かれた。 「聞いたぜ〜智也ちゃん。弟のクラスメイトと付き合うことにしたんだって?」 耳の早い奴だ。俺は苦笑する。 「卓也は関係ないだろ。後輩って言えよ」 付き合うことになったのは、同じ管弦楽部の後輩だ。 同じクラリネット担当で、小柄で髪が綺麗で愛らしい女の子。 恋愛感情は正直言って全く持っていなかったが、付き合ってみるのも悪くないと思った。 かー、と友人が額を押さえる。 「いーよなぁ、顔がいいってお得ぅ。お前って結構性格破綻者なのに」 「やだな。裏表があるだけデスヨ。皆あるもんさ」 「お前のは酷いよ。弟くんくらい可愛げがあればなぁ」 「だーから、なんですぐ卓也が出てくんのかな」 年子で顔が似ているからと、よく卓也とは比較される。俺は、それが嫌だった。 卓也は幼い頃から素直で従順で、つまり俺は卓也を、つまらない奴だと評価しているのだから。 卓也は俺を慕っているようだが、果たしてそれもどこまで本当だか。自分がこんな性格だから、信用なんて出来ない。 とか、思っていたら、卓也からメールが届いた。 「噂をすれば…」 内容は、放課後に音楽室に来てくれというものだった。メールを覗き込んだ友人がへらへら笑う。 「おっと、もしかして兄弟で取り合いか?」 卓也も同じ管弦楽部だ。充分に有り得る。だが。 「だったら女の子を呼び出すデショ」 俺に文句を言われても困る。 [*前] | [次#] 『学校関連』目次へ / 品書へ |