長い夜の始まり

09


 更に加速するピストン。処女が相手だろうと父には関係ないらしい。
 父が遊糸を掻き抱いた。激し過ぎる交合に、遊糸は子供のように泣きじゃくりながら父にしがみつく。

 そこに、六花の存在はない。

 だからと言って、立ち去ることも恐らく、許されないのだ。父は最愛の息子との交わりを、誰かに見ていて欲しいのだから。


「あぁ、遊糸、遊糸…愛してる…!」


 びくりと跳ねる、白い肩。

 六花はそこにそっと唇を押し付けた。
 いやいやとむずかるように遊糸の髪が揺れる。構わず、耳に言葉をねじ込んで追い詰めていく。

「『逃げてごめんなさい』って」
「ひ、ぁ…。あ、ぃ、…っにげ、ごめ…なさ…は! ぁ、っぅ、」

「『これからいっぱい愛して下さい』って」
「っぁ、ひゃ、あ、これ、あぁ…っ! これから、いっぱ…あ! あくっ…あいひ、あいひて、くらさ…っ」

「遊糸…!」

 父が呻いて、恐らく、遊糸の中に白濁を放った。震え続ける遊糸の躯が、「ひ、ぁ…!」一層大きく跳ねた。



 逃げてごめんなさい。これからいっぱい愛して下さい。



 言質は取った。
 父にキスを降らされる彼にそっと微笑んで、六花は囁いた。

「愛してるよ、兄さん」

 これからたくさん、壊れるくらいに愛してあげる。
 これからたくさん、愛するくらいに壊してあげる。


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